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プロ野球

【2020ドラフト総括:ソフトバンク】独自性を発揮した一方で補強ポイントは埋められなかったが、これも王者の余裕?

出野哲也

2020.11.02

 また、今季はチーム防御率両リーグトップと投手力は充実していたが、それでも長い目で見て将来のエース候補も必要だった。地元・福岡には山下舜平大(福岡大大濠高→オリックス)という将来性抜群の逸材がいて、外れ1位で行くかとも思われたが結局、指名せず。巨人以外に山崎伊織(東海大)を指名するならソフトバンク、という憶測もあったが、これも実現しなかった。

 終わってみれば支配下指名の投手は1人だけで、それも高校生の田上。育成1位では、慶応大で下級生の頃から高い注目を集めていた佐藤を指名したが、彼もヒジの手術の影響で一軍のマウンドに立つにはしばらく時間がかかる。
 
 毎年酷使されて消耗が激しいブルペンにも誰かを加えるかと思われたが、前述の通り本指名では高校生1人。鈴木昭汰(法政大→ロッテ)、平内龍太(亜細亜大→巨人)、森浦大輔(天理大→広島)らが残っていれば指名したかもしれないが、2巡目が回ってきた時点でみな消えていた。泉圭輔や杉山一樹が戦力となり、二軍や三軍にも楽しみな素材が控えていて、そこまでの必要性はないと判断したのかもしれない。

 全体的に独自色の強く出た指名は、王者の余裕ともとれる。ただし事前に挙げていた補強ポイントを満たすものではなかった。また近年、加治屋蓮(13年)、吉住晴斗(17年)、昨年の佐藤直樹ら、ドラフト前の評価より上位で取った1位の選手は、期待されたほど結果が出ていないのも事実。今回も、そうした危うさを感じるドラフトだった。

文●出野哲也

【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『プロ野球 埋もれたMVPを発掘する本』『メジャー・リーグ球団史』(いずれも言視舎)。
 

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