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プロ野球

「フェン直査定」要求の中田翔。札幌ドームの“被害”にあって損した本塁打は9本? 

新井裕貴(SLUGGER編集部)

2020.11.27

ナゴヤドームでプレーする打者も成績面では不利になる。こうした点も野球の面白さだが。写真:SLUGGER

ナゴヤドームでプレーする打者も成績面では不利になる。こうした点も野球の面白さだが。写真:SLUGGER

 筆者が計測したこの9本は、いずれもフェンス上段から2メートル以内には当たっていて、確かに札幌ドーム以外であれば本塁打になっていた可能性は高い。タイトルはもちろん、自身初の40本の大台も見えていただけに、確かに異議申し立てをしたくなる気持ちも納得である。しかも、これらはあくまで“直撃”した打球のみであり、例えばフェンス間際まで飛んだフライはカウントしていないから、もっと増えてもおかしくない。

 8月6日からの西武戦では、3試合連続で“フェン直”=本塁打未遂の打球となっていて、フラストレーションも溜まっていたのは容易に想像できる。9月5日の同カードではギャレットのストレートを完璧に捉え、本人も確信した様子だったが惜しくも柵越えはならず。10月30日のオリックス戦でも、浮いたカーブを捉え、こちらも本人は手ごたえを感じた歩き方だったが、まさかのシングルヒットに終わった。
 
 8月22日の楽天戦で両リーグ最速での20号に達した時、中田は「札幌ドームで入れば、どこでも入るのでね。他の球場がうらやましい。何本、ホームランを損しているんだと考えた時に、ちょっと悲しくなる」と口にしていたが、1本差でタイトルを逃した悔しさが、改めて“魔境”への恨み節になったのだろう。

 もちろん、これは中田だけに当てはまるわけではない。打者が不利な本拠地、例えばナゴヤドームや甲子園でプレーしている選手にも同じことが言えて、打者有利な球場でプレーしている選手との成績を「同じ尺度」で比較することはできないのである。投手目線で言えば、この逆もまた然りである。

 野球というスポーツは日米問わず、フィールドの規格に決まりがない。相当に珍しい競技と言えるだろう。だからこそ、各球場で観戦するのが面白いという面も生んでいる一方で、「数字」を見ていく時には注意が必要になってくるわけである。同じ試合、同じ打撃成績の選手でも、本拠地の違いに着目した時、その数字の意味が変わってくるからだ。

 こうした考え方が、セイバーメトリクス(統計学的な見地から客観的に選手を分析していく手法)にも通じていくのであり、なぜ「球場補正」を行っていくのかという、分かりやすい事例とも言えるだろうか。

文●新井裕貴(THE DIGEST編集部)
 
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