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プロ野球

ホークスの元絶対エース・斉藤和巳が柳田でも千賀でもなくモイネロをMVPに推す理由【独占インタビュー】

新井裕貴(SLUGGER編集部)

2020.12.16

先発投手の交代が早くなっている現代野球において、リリーフの重要性は増すばかり。斉藤氏の主張は“トレンド”を見据えた上でチームにもたらす“価値”から考えられている。写真:滝川敏之

先発投手の交代が早くなっている現代野球において、リリーフの重要性は増すばかり。斉藤氏の主張は“トレンド”を見据えた上でチームにもたらす“価値”から考えられている。写真:滝川敏之

――では、斉藤さんの目に今年の“ギータ”はどう映りましたか?

「もちろん本当に素晴らしかったです。今年は印象的なホームランも多く、確かにMVPを獲っても不思議はないと思います。ただ、自分はピッチャー出身なだけに、モイネロの『価値』がより上に見えてきますね。もし僕が現役の時にモイネロと森がいたら、おそらく毎試合、2人に感謝していると思います(笑)。

 例えば、千賀の完投は今季1試合だけでした。他の17試合はすべてリリーフに託しているわけです。投手三冠も、モイネロというスーパーリリーフがいたからこそ成し遂げられたという点は見逃せません。僕には、どの角度から見てもMVPはモイネロ以外考えられないんだけどなぁ(笑)。

 今年はコロナの影響でコンディション管理が難しく、例年以上に慎重な投手運用をしていたのは間違いありません。ホークスの投手で規定投球回に乗ったのは千賀だけでしたが、それも最終戦でしたよね。それに、調整が難しかったのはリリーフ陣も同じです。しかも先発と違って、彼らは毎日球場に来てブルペンで待機しなければならない。僕は現役の時から、先発ピッチャーってこんなに優遇されていいのかなって思っていました。僕自身、完投が多いピッチャーではなかったので、いつも『この勝利は僕だけじゃない、みんなのおかげ』だと伝えていました。
 
 確かに投手三冠は素晴らしいことです。ただ、それはリリーフの助けがあったからこそだった、というのはファンの方にも忘れてほしくないですし、知ってほしいです。例えば、大野雄大(中日)、菅野智之(巨人)のように、完投完投、連勝連勝というのであれば、「モイネロには悪いけど、千賀かなぁ」となったかもしれませんけどね。

 もし、記者の方がモイネロではなく千賀を上にするようであれば、リリーフの評価はまだまだ低いんだなと感じるでしょう。これだけ1試合を投げ抜く投手が少なくなっている中、負担や重要度が増すリリーフはもっと評価されるべきで、いつまでも先発投手が花形だとは思えないですね。

 これは別の角度からの話ですが、モイネロのようなリリーフが大きな賞を受賞することで、多くの投手に新たな目標が生まれると思うんです。「ちゃんと評価してくれる人がいる」と伝わると思いますし、将来、プロ野球を目指す子供たちにも大きなメッセージになるはずです。そういう意味でも、モイネロがMVPを受賞するのかどうか注目したいですね。

【プロフィール】
さいとう・かずみ/1977年11月30日、京都府京都市出身。1995年ドラフト1位で福岡ダイエーホークスに指名されてプロ入り。2003年にパ・リーグ18年ぶりの20勝の大台をクリアし、最多勝・最優秀防御率・最高勝率のタイトルを獲得して沢村賞に選ばれた。06年にはプロ野球史上初の開幕15連勝を達成するなど、史上7人目の投手五冠を達成して自身2度目の沢村賞を受賞。13年限りで現役を引退し、現在は評論家・解説者として活躍。ツイッターIDは「@kazumi_saitoh」、YouTubeチャンネルも開設している。
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