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MLB

大地震が起こってもワールドシリーズ開催を望んだベイエリア市民の当事者意識。一方、東京五輪開催を控えた我々といえば……?【豊浦彰太郎のベースボール一刀両断!】

豊浦彰太郞

2021.03.05

 第1戦と第2戦は、アスレティックスが本拠地オークランド・コロシアムで連勝。第3戦は、10月17日にジャイアンツの当時の本拠地、キャンドルスティック・パークで開催される予定だった。ところが、試合開始直前、マグニチュード6.9の大地震がベイエリアを襲った。地震発生時、ちょうど解説者のティム・マッカッバーらが全国中継で試合前のプレビューを語っており、結果的にその瞬間が全米にテレビ中継されることとなった。地震によって両軍の本拠地を結ぶベイブリッジは一部が崩壊し、死者62名、負傷者3208名を出す大惨事となった。

 もちろん、試合は即座に中止された。1ヵ月前にコミッショナーに就任したばかりのフェイ・ビンセントは、シリーズの延期を宣言。安全面の問題から、舞台を他都市に移しての開催も検討された。しかし、10日間の復旧作業期間を経て、10月27日にキャンドルスティック・パークにワールドシリーズが戻った。史上初のベイエリア・シリーズを、何としても最後まで開催したいという市民の熱意の賜物だった。
 
 再開された第3戦では、警察官、消防士、看護婦、ボランティアなど、被災者の救済や街の復興に尽力した人々により始球式が行われ、大きな感動を呼んだ。ゲームはアスレティックスが制し3連勝。翌日の第4戦も勝利し、4連勝での世界一を達成した。ベイエリア住民がシリーズ再開を望んだことは、彼らの強い地元愛、復興に賭ける強い意志、そしてベースボールへの深い愛を異国のファンにも示してくれた。

 もちろん、同じ危機下でも自然災害と現在のコロナ禍では事情が異なる。89年のベイエリア住民を現在の日本国民と同列に論じることはできない。地震や台風では、それらが終わった瞬間から復興が始まる。一方、感染症の蔓延においては出口が見えにくい。言わば、いまだ災害発生中だ。しかし、このことを考慮しても、現在の日本国民は、寸前に迫っているオリパラ開催の是非や可否に十分な当事者意識を示しているとは言い難い。それはとても残念なことだと思う。

文●豊浦彰太郎

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