何と言っても、佐々木の持ち味は163kmを計測したストレートだ。
だから、同じ速球派になぞらえて「大谷クラス」と言う声は根強い。個人的には変化球も巧みに操れるから、ダルビッシュ有(カブス)に近いのではないかと思っているが、やはりこちらも、スカウトの見立ては「規格外」という表現だ。
「これまでのスカウト歴で『初めて見た投手』という印象。佐々木に当てはまる投手はいない。佐々木の投球を見ていて思うのは、彼がボールを離してからキャッチャーに到達するまでの時間が今までにない速さであるということ。
大谷は高めに投げて160kmを出したけど、佐々木の場合は低めに投げて163kmを出したから、ちょっと次元は違うかな。佐々木はいいフォークを投げる。けど、これもキャッチャーが取れない。だから佐々木は、常にキャッチャーが取れるかな、取れないかなっていう不安の中で投げていたんです。それだけ能力が高いってことです」
一方、そんな佐々木で難しいのが育成方法だ。先人の速球派である大谷がメジャーに行って右ヒジの靭帯を損傷し、トミー・ジョン手術を受けている。単純に考えて、佐々木にも同じ危険性を秘めている。
あれほど計画的だった花巻東の育成法、日本ハムの選手育成メソッドがありながらも、大谷はメジャー1年目ないし渡米前からヒジに爆弾を抱えていた。佐々木の育成方針を含めて、必ず議題になっているはずである。
「大谷や田中将大(ヤンキース)でさえも怪我をしている。だから、単純に考えても、それ以上に投げられる能力がある佐々木にはリスクもあると。そういう予測のもとに取らなきゃいけないところはあります。日本のマウンドは年々、メジャーに近づいてきている。粘土質で、踏み出した足が固いので、上体投げになってしまいがちになる。それで上体に負担がかかってきて靭帯に影響が出る。
そういうリスクは負わないといけない。トレーニング方法も各球団がそのノウハウがあるのかどうか。あれだけの能力を持っている選手がいないわけやから、どういうスパンで鍛えていくのか。しっかりボールを投げたら、即一軍にいけるように思うけど、体力が追いつかないですからね」
米村氏は、佐々木のデビューは「早くても3年」という見方をしている。「早くて」だから、あくまでデビューが3年目であって、一軍のローテーションに定着するのはもっと先だ。それほど慎重に扱わないといけないということのようだ。
「5年はかからないだろうけど、準備万端で1年間投げられる体力を作るのには、最低でも3年はかかるんじゃないかな。1年間は体力作りに専念して、2年目はファームのローテションでバンバン回す。それで怪我がなければ、2年半くらいから、あるいは、3年目に一軍デビューというところでしょうね。奥川にしても、近代にいない二人だから、育成法に関してはしっかり考えてあげないといけないなと思います」
並び立つ巨星・奥川恭伸と佐々木朗希。
世間では様々に評価されるが、現場のスカウトの意見を聞いていくと、詳細にその姿は見えてくる。
「ドラフト当日のテーブルで決まる」
米村氏は、他にも候補がいるとした上で、この二人のどちらを選択するかは、ここ数年にないほどの難題な作業になると断言している。
「愛知に、もう一人、偉大なる高校生スラッガーがおるんや」
それぞれの球団がどういう決断を下すのか。
運命の日はいよいよ明日。
今から楽しみでならない。
取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
だから、同じ速球派になぞらえて「大谷クラス」と言う声は根強い。個人的には変化球も巧みに操れるから、ダルビッシュ有(カブス)に近いのではないかと思っているが、やはりこちらも、スカウトの見立ては「規格外」という表現だ。
「これまでのスカウト歴で『初めて見た投手』という印象。佐々木に当てはまる投手はいない。佐々木の投球を見ていて思うのは、彼がボールを離してからキャッチャーに到達するまでの時間が今までにない速さであるということ。
大谷は高めに投げて160kmを出したけど、佐々木の場合は低めに投げて163kmを出したから、ちょっと次元は違うかな。佐々木はいいフォークを投げる。けど、これもキャッチャーが取れない。だから佐々木は、常にキャッチャーが取れるかな、取れないかなっていう不安の中で投げていたんです。それだけ能力が高いってことです」
一方、そんな佐々木で難しいのが育成方法だ。先人の速球派である大谷がメジャーに行って右ヒジの靭帯を損傷し、トミー・ジョン手術を受けている。単純に考えて、佐々木にも同じ危険性を秘めている。
あれほど計画的だった花巻東の育成法、日本ハムの選手育成メソッドがありながらも、大谷はメジャー1年目ないし渡米前からヒジに爆弾を抱えていた。佐々木の育成方針を含めて、必ず議題になっているはずである。
「大谷や田中将大(ヤンキース)でさえも怪我をしている。だから、単純に考えても、それ以上に投げられる能力がある佐々木にはリスクもあると。そういう予測のもとに取らなきゃいけないところはあります。日本のマウンドは年々、メジャーに近づいてきている。粘土質で、踏み出した足が固いので、上体投げになってしまいがちになる。それで上体に負担がかかってきて靭帯に影響が出る。
そういうリスクは負わないといけない。トレーニング方法も各球団がそのノウハウがあるのかどうか。あれだけの能力を持っている選手がいないわけやから、どういうスパンで鍛えていくのか。しっかりボールを投げたら、即一軍にいけるように思うけど、体力が追いつかないですからね」
米村氏は、佐々木のデビューは「早くても3年」という見方をしている。「早くて」だから、あくまでデビューが3年目であって、一軍のローテーションに定着するのはもっと先だ。それほど慎重に扱わないといけないということのようだ。
「5年はかからないだろうけど、準備万端で1年間投げられる体力を作るのには、最低でも3年はかかるんじゃないかな。1年間は体力作りに専念して、2年目はファームのローテションでバンバン回す。それで怪我がなければ、2年半くらいから、あるいは、3年目に一軍デビューというところでしょうね。奥川にしても、近代にいない二人だから、育成法に関してはしっかり考えてあげないといけないなと思います」
並び立つ巨星・奥川恭伸と佐々木朗希。
世間では様々に評価されるが、現場のスカウトの意見を聞いていくと、詳細にその姿は見えてくる。
「ドラフト当日のテーブルで決まる」
米村氏は、他にも候補がいるとした上で、この二人のどちらを選択するかは、ここ数年にないほどの難題な作業になると断言している。
「愛知に、もう一人、偉大なる高校生スラッガーがおるんや」
それぞれの球団がどういう決断を下すのか。
運命の日はいよいよ明日。
今から楽しみでならない。
取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。