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高校野球

今春のセンバツは背番号2ケタの選手たちが躍動――その理由は、実はコロナ禍にあり

氏原英明

2021.03.28

「(コロナ禍で)4~6月は活動できなかったですし、神奈川県の場合は独自大会が8月にスタートして、甲子園での交流試合が(10~17日に)あって、県大会の決勝が23日。その後、24日から学校も始まって、ほぼオープン戦もない状態で秋の地区予選が始まりました。とにかく日にちがなかったんですね。そんな中で、関東大会までは新しい選手を鍛えるとか、彼らにチャンスを与える場もなかった」。

 昨年4月の緊急事態宣言から活動停止を余儀なくされたチームは多い。特に現2年生は入学して間もない時期で、チームメイトたちと満足に顔を合わすことすらできなかった選手もいただろう。そして、夏の大会は3年生のために独自大会を開催。チーム作りが3年生重視にならざるを得なかった。

 そんな状況のまま新チームに移行したとあっては、経験者を優先的に起用する方針になってしまうのは仕方ない。センバツを賭けた負けられない戦いなのだから、経験を積ませる時間はほぼない。新入生の実力を試す場面も、チャンスを与える機会もなかったのだ。

「年末にかけてさまざまなことができるようになって、やっといろんな選手を見る余裕ができた。やはり、(選手の成長には)時間とか、チャンスを与える場所が必要だと思います。それができたことによって、今大会では新しい戦力の台頭があった」
 
 高校野球は12月からオフシーズンに突入した。その間、それまでチャンスをもらえなかった選手たちが奮起し、春のメンバー入りを目指したことで実力を上げてきた。そして、3月の練習試合解禁から少しずつ場数を踏んで、レギュラー陣との実力差が埋まってきたということであろう。

「(昨年の秋に)ベンチを外れた時から、悔しい気持ちが続いていた。数は分からないですが、冬の間に自主練で振り込んできて、春になってベンチに入れて嬉しかったです」

 多井はそう言って、はにかんだ。

 新型コロナの影響は意外なところにもある。今回のセンバツは、新たな発見をくれる大会なのかもしれない。
 
取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。

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