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プロ野球

まさに多士済々!“名将”ノムさんが育て上げた数々の愛弟子たち<SLUGGER>

筒居一孝(SLUGGER編集部)

2021.06.18

楽天時代の教え子である嶋(左)と山﨑(右)。楽天時代のノムさんは70代だったが、指導力に衰えはなかった。(写真は『野村克也-STORY BOX-』より)

楽天時代の教え子である嶋(左)と山﨑(右)。楽天時代のノムさんは70代だったが、指導力に衰えはなかった。(写真は『野村克也-STORY BOX-』より)

■阪神時代(98~2001年)
 3年連続最下位と期待外れの成績に終わった阪神監督時代も、実はさまざまな奇策を打ち出している。98年には外野手の新庄剛志を「投手心理を理解させるため」と投手に起用。オープン戦では最速145キロの速球を武器に、巨人打線を三者凡退に抑え、日本球界初の“二刀流”が一時現実味を帯びたが、新庄の故障や調整の難しさにより断念となった。また、シーズンでは遠山奬志と葛西稔に対し、降板後に一塁を守らせてまた登板させる“遠山・葛西スペシャル”を実施するなど、少ない戦力を効率的に活用するための戦術を生み出していた。

■楽天時代(06~09年)
 最後に監督を務めた楽天でも、ノムさんらしさは健在。「キャッチャーは頭の回転が良くなければ務まらない」を持論とし、中学時代の通知表がオール5だった嶋基宏(現ヤクルト)を07年のルーキーイヤーから正捕手に起用した。いきなり大きな期待をかけられ、嶋はキャンプとオープン戦で5~6キロも体重が落ちたというが、最終的には期待通りに成長。強肩とインサイドワークに優れ、ノムさんから「もっとも捕手らしい捕手」と絶賛された。
 また、山﨑武司の再生も見事だった。山﨑はノムさんから「三振を恐れずに思いっきり振れ」と言われたことで、迷いが消えて野球が楽しさを思い出したという。さらに、ノムさんは来た球を打つタイプだった山﨑に、「相手の配球を読め」とも指導。その結果、07年には39歳にして本塁打王と打点王の二冠に輝く大復活を遂げた。当初は「野村監督が就任すると聞いて絶望感のみだったね」と言っていた山﨑も、今では「野球をやめてからもオヤジと呼べる人」と言うほどノムさんに心酔している。

 実は今の12球団の監督の中には、ノムさんの指揮下で選手としてプレーした人物が、何と5人もいるのだ(阪神の矢野燿大、ヤクルトの高津、西武の辻、楽天の石井一久、日本ハムの栗山英樹)。彼らの中には多かれ少なかれ、ノムさんの教えが息づいているはず。ノムさん本人は亡くなってしまったが、指導者として刻んだ足跡は決して消えない。ノムさんが生み出した理論や戦術は、これからもプロ野球の世界に受け継がれていくことだろう。また、6月29日予約開始の『野村克也-STORY BOX-』では、ここに挙げた江本と江夏、嶋や山﨑といった教え子たちが対談形式で、ノムさんの思い出を語り合っている。

文●筒居一孝(SLUGGER編集部)

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