専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
プロ野球

偉大なる「捕手」阿部慎之助が球界に残した功績と「指揮官」としての未来

2019.11.10

試合後は万雷の歓声を受けてスタジアムを去って行った。写真:山崎賢人(THE DIGEST写真部)

試合後は万雷の歓声を受けてスタジアムを去って行った。写真:山崎賢人(THE DIGEST写真部)

 野村はかつて、阿部について「天才型」だと評したことがある。確かに阿部はアマチュア時代から打撃には定評があり、シドニー五輪の日本代表にも選ばれたほどだ。巨人に逆指名で入団してからも、ルーキーイヤーから2ケタ本塁打を放つなど素質の高さを示していた。

 対して野村は「努力型」だった。テスト生として南海に入団した彼は芽が出るまでに数年を要しており、一軍定着を目指してひたすら素振りを繰り返したという。また、キャッチャーとしてのリード術をバッティングにも応用し、配球を読んで打った野村に対して、阿部は「バッターボックスに入るとキャッチャーとしての考えはどこかに行ってしまう」タイプだったという。「あのバッティングセンスに配球読みが加われば、三冠王だって取れただろう」とすら野村は述べている。

 確かに二冠王に輝いた2012年、本塁打もバレンティンと4本差の2位だった。キャッチャー阿部とバッター阿部がもっと高度にハイブリットしていれば、さらに手の付けられない打者になったということだろうか。

 
 もっとも、阿部には野村流のやり方はあまり合わないのではないか。野村はいわゆる智将だ。捕手としても打者としても、そして監督としても常に創意工夫を用いて成績を上げることに腐心していた。それもひとつのやり方だが、「あれこれ細かく考えすぎる」のは、阿部には似合わない。だからこそバッター阿部とキャッチャー阿部は全くの別人のようだったのだろうし、もし阿部が巨人の監督になったとしても、そういう智将タイプの監督にはおそらくならないだろう。

 阿部はどちらかというと、強烈なリーダーシップを発揮してみんなを引っ張っていくタイプだ。自らは中心にドッシリ構えることで安心感を与え、時には叱咤激励して選手を鼓舞する。主将としての阿部はそうやってチームを引っ張ってきたし、何より巨人はそういう監督を好むチームでもある。

 日本シリーズ終了後、阿部が巨人の2軍監督に就任する旨が発表された。引退したばかりの阿部に対して、「いきなり監督になったらどうこう」という話は飛躍しすぎかと思ったが、これで将来の1軍監督就任に向けてレールが敷かれたことになる。

 巨人の1軍監督は元スター選手でなければならない。その意味において阿部は資格十分だし、何より巨人は原監督の後を継ぐ若い指導者の育成が急務だ。これらの事情を勘案するに、今回の人事は事実上の1軍監督手形とみなしていいだろう。近い将来に実現するであろう巨人・阿部監督が、日本シリーズでリベンジを果たす姿を楽しみに待ちたい。


文●筒居一孝(スラッガー編集部)

【日本シリーズPhoto】ソフトバンクが3年連続日本一!!試合後には阿部慎之助も宙に舞う!!!

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号