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侍ジャパン

稲葉監督の脳裏に焼き付く“北京の悪夢”。侍ジャパンは負のジンクスを克服できるか【東京五輪】

出野哲也

2021.07.28

 この時、選手として屈辱を味わったのが他ならぬ稲葉監督だった。6月16日の代表選手発表会見で「心の中で『五輪の借りは五輪で返す』と誓ってきた」と語っていたように、稲葉監督の中でも北京のリベンジという思いは相当強い。7月には、星野監督の墓前で金メダル獲得を誓った。

 北京に限らず、オリンピックでの日本代表はほとんど期待に応えられていない。04年アテネ大会も、全員プロ選手で臨みながら格下のオーストラリアに2敗して銅メダル。初めてプロが参加した00年シドニーもメダルに届かず、北京と同じ9試合で4勝5敗だった。韓国と並び、最もオリンピックの野球に力を入れている国でありながら、金メダルは公開競技だった84年のロサンゼルス大会が最初で最後なのだ。

 そして今大会の対戦相手も、メジャーリーガーが参加していないとはいえ楽観はできない。例えばアメリカにはシェーン・バズ(レイズ)のようなトップ・プロスペクトがいるところに、セ・リーグトップのOPSを記録しているタイラー・オースティン(DeNA)、ソフトバンクで7勝、防御率2.03のニック・マルティネスらNPBで活躍中の実力派選手たちが加わる。北京でも、マイナーリーガーばかりのアメリカに2度も敗れている。今回もまったく油断はできない。
 
 その点はドミニカ共和国も同様。半引退状態の元メジャーリーガーを呼び寄せるなど、いささか寄せ集め感は否めない一方で、メジャー指折りの有望株フリオ・ロドリゲス(マリナーズ)や、巨人のローテーション投手CC・メルセデスもいる。それでなくとも、野球は番狂わせが起きやすいスポーツ。一発勝負のトーナメントで先発投手が好投すれば、格下のチームが勝利を収めるケースは往々にしてある。自国開催ということが、かえって目に見えないプレッシャーになることも考えられる。

 WBCやプレミア12では頂点に立っているものの、五輪では長く優勝から遠ざかっている日本代表。それでも、冷静に見れば日本が大本命であることには変わりない。悪しきジンクスを打破し、オリンピックの正式種目としては最後となるかもしれない今大会を最高の結果で締めくくることができるだろうか。

文●出野哲也

【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『プロ野球 埋もれたMVPを発掘する本』『メジャー・リーグ球団史』(いずれも言視舎)。

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