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【杉浦大介のNYレポート】期待外れの戦いが続くヤンキースはトレード・デッドラインでどう動く?<SLUGGER>

杉浦大介

2021.07.28

 アーロン・ヒックスの故障離脱もあって、ヤンキース打線には右打ちのパワーヒッターがずらりと並ぶことになった。このような極端な編成も、結果が伴わなければ非難されるのは仕方ないだろう。

 台頭期はスーパースター候補と目されたグレイバー・トーレス、ゲリー・サンチェスは低打率に喘ぎ、アーロン・ジャッジですらルーキーで52本塁打を放った17年当時の打棒を取り戻せていないこともファンの苛立ちを煽っている。加え、近年のヤンキースはかつてと比べて大型補強に消極的。オーナーのハル・スタインブレナー氏が総年俸をぜいたく税課税ライン以下に抑えたいと考えていることは公然の事実でもある。

 これらの背景が影響したか、最近のヤンキー・スタジアムは一時と比べてかなり熱気が薄れた印象がある。デレク・ジーター、アレックス・ロドリゲスらを擁したスター軍団も今は昔。華やかさが失われ、倦怠すら感じさせるチームに、ニューヨーカーが熱くなれないのは致し方ないところなのだろう。
 
 このような状況下で、30日に迎えるトレード・デッドラインにヤンキースがどんな動きを見せるかが注目される。本来なら「売り手」に回った方がベターにも思える状況だが、ヤンキースに限ってはやはりそれはあり得ない。ぜいたく税ラインを超えない程度の小幅なてこ入れにとどまるのか、それとも本来のヤンキースらしい思い切った大型補強に乗り出すのか。

「優勝を狙うのに必要な戦力を獲得するためなら、もちろん補強を考える」――7月1日時点で、スタインブレナー・オーナーはそう述べ、今夏も「買い手」になる意気込みを述べていた。ただ、亡き父ジョージと比べ、勝利よりもビジネス優先に見えることが多い現オーナーに、本当に積極的な補強に臨む気概はあるのかは疑問視される。

 地区優勝は難しそうな現状で、しかもぜいたく税課税ラインまではあと300万ドル程度しかない。そんな状況で噂に上がっているトレバー・ストーリー(ロッキーズ)、ジョーイ・ギャロ(レンジャーズ)、スターリン・マーテイ(マーリンズ)といった実績のある選手を獲得に行くのだろうか……?

 26日にはパイレーツから救援投手のクレイ・ホームズを獲得したが、まさかこれで終わることもあるまい。分岐点を迎えようとしているMLB最大の名門チーム。ここでオーナー、フロントがどんな決断をするかで、ヤンキースが向かう近未来の方向性がうっすらと見えてくるだろう。

文●杉浦大介

【著者プロフィール】
すぎうら・だいすけ/ニューヨーク在住のスポーツライター。MLB、NBA、ボクシングを中心に取材・執筆活動を行う。著書に『イチローがいた幸せ』(悟空出版 )など。ツイッターIDは@daisukesugiura。
 
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