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プロ野球

戦線を打開するための「決死の継投策」――ヤクルトが7回に石山を投入した理由【氏原英明の日本シリーズ「記者の目」】<SLUGGER>

氏原英明

2021.11.24

 しかし、ヤクルトはここからさらに決死の継投策を講じる。4番の杉本を申告敬遠で歩かせた後、かつてはクローザーを務めた石山泰稚を投入したのだ。そして、その石山がモヤの代打ジョーンズを空振り三振に切って取り、追加点は与えなかった。

 そして7回裏に、ヤクルトは反撃に転じる。オリックスの4番手・吉田凌から先頭の青木宣親がライト前ヒットで出塁。続く山田哲人と村上は凡退したものの、5番のサンタナが吉田凌の伝家の宝刀・スライダーを右中間スタンドへ叩き込んだのだった。

 そして、8回表のマウンドには、イニングを跨いで石山がマウンドに上がった。この采配も、高津臣吾監督らしい。

「打ち取り方がすごく良かったので、8回も行かせようと。追いついても逆転しても、そのままでももう1イニング行かせようと思った」

 8回を石山が無失点に抑えると、9回にはマクガフがピンチを作りながらも逃げ切って見せたのだった。

 今日の試合を見てやはり思うのは、過去2戦の戦いがここにも繋がっていたことだ。これまでヤクルトが手を焼いたのは、1番・福田、2番・宗、3番・吉田正と、それぞれタイプの違う左打者が並ぶ打線。さらにその後ろに本塁打王の杉本が待ち構えるという並びは、そう簡単に乗り切れるものではない。
 
 1、2戦は辛くも先発投手が切り抜けたが、同じことの繰り返しでは反撃を食らう可能性もある。それだけに、これまでになかった継投を挟む必要があった。

 それが好調の宗を抑えた田口であり、1.1イニングを無失点で切り抜けた石山の存在だった。

 石山は言う。

「今日の場面は満塁だったので、あのバッターをどう三振に取るかを考えてマウンドにいきました。そこを押さえられてみんなでやっているとい言うのが出た試合だったと思う。今季はスアレスや田口に助けられていたので、今日は最後、助けられて良かった」

 石山は今季クローザーでシーズンのスタートを切った。序盤はそれほど調子が悪いわけではなく、4月27日に初黒星を喫するまでは8セーブを上げるほどだった。ところが、5月になると目に見えてパフォーマンスが落ちて、クローザーからも外されていた。

 だが、石山もこれまでに多くの修羅場をくぐってきた選手。それだけに、シリーズが3戦目にきて勝利に貢献できたことは、本人にとっても、チームにとっても大きなものになったに違いない。

「マクガフが初戦に打たれた。ただやられたことは頭の中から離れることはないと思うけど、こうやって、勝ちに導くピッチングをしてくれたことは、我々にとっても元気になるし、チームにとって、明日も頼むぞとなれた。これでスッキリと4戦目を迎えられる」

 高津監督はそう語っている。石山の投入で、もう一つの勝ち方を見つけることができた。これが大きな1勝であることは間違いない。

文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』『甲子園は通過点です』(ともに新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
 

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