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プロ野球

「ここは山岡しかいない」――崖っぷちのオリックスに救世主! 山岡泰輔が5ヵ月ぶりの“復帰戦”で見せた矜持【氏原英明の日本シリーズ「記者の目」】<SLUGGER>

氏原英明

2021.11.26

 試合後の山岡の言葉を聞くと、中嶋監督の「山岡しかいない」という言葉の意味が読み取れる。

「ヒジさえ治っていれば、調整をして気持ちの準備だけだった。投げる機会があればと思っていたんで不安はなかったです」

 普段からの取り組みが自分の中に確固として自信としてあるからこその言葉だろう。自身の体の状態がどのようになっているかきちんと把握しているからこそ、難しいことも簡単に言いのけてしまうのである。

 シーズン中に怪我で離脱してしまったことに悔いはあると思うが、それでもここで合わせてきたのは、日頃の積み重ねの賜物だ。

 山岡は言う。
 
「メンバーに入った時からどんな少しの場面でもチームに力を貸したいと準備していたので、準備は出てきていました。マウンドに行くときはムードが相手に向いている時だったので、球場の雰囲気を変えたいなと思いました。それは0に抑えるしかないので、どんな形でもいいので、無失点でベンチに帰ってきたいなという気持ちでマウンドに行きました。

 ワクワクした分、かなり力が入ったんですけど、短期決戦は結果が0だったらいいかなと思います。(日本シリーズは)限られたチーム、限られた人しか投げられないところだと思うので、こうやって怪我で離脱していたのに、投げさせてもらえたことに感謝しています」

 これでオリックスは2勝目。まだ崖っぷちに立たされている状況には変わりはないが、この日、初めてセーブシチュエーションでマウンドに上がり、無失点で抑えた平野佳寿とともに、チームの勝利に貢献した救世主のような存在はやはり大きい。

 第6戦目は山本由伸が先発し、長いイニングを投げて抑えてくれるはずだ。そこで勝つことができれば、第7戦はおそらく総力戦になる。山岡というピースは、きっと日本シリーズの最終盤にまた力を貸してくれるに違いない。

文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』『甲子園は通過点です』(ともに新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
 

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