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MLB

ロックアウトは「億万長者と百万長者の争い」にあらず。オーナーたちの強欲と傲慢が招いたMLB開幕延期<SLUGGER>

久保田市郎(SLUGGER編集長)

2022.03.02

 だが、プールの総額についての選手会とオーナー側の隔たりはあまりにも大きかった。当初、1億500万ドルを要求した選手会に対し、オーナー側はわずか1000万ドル。選手会の要求が妥当かどうかはともかく、たった1000万ドルでは何の足しにもならない。最終的に3000万ドルに引き上げた(選手会も8500万ドルまで妥協した)が、現状を正しく認識した上での誠意ある対応とは言い難いものだった。

 戦力均衡税の引き上げについても同様だった。上でも指摘したように、この10年間でMLBの総収入は70%近く増えたが、同じ期間の戦力均衡税の課税ラインはわずか15%しか上がらなかった。

 戦力均衡税が選手年俸の抑制の大きな要因となっていることは、あのヤンキースでさえ、超過で課される「税金」を嫌っていることも明らかで、選手会は課税ラインの大幅引き上げを求めた。だが、オーナー側はペナルティの厳格化こそ撤回したが、課税ラインについては現状とほとんど変わらない2億2000万ドルを最後まで譲らなかった。
 ここで、事態の進展を改めて振り返ってみよう。そもそも、ロックアウトを仕掛けたのはオーナー側だ。

 この時、マンフレッドはロックアウトに踏み切った理由を「交渉を加速させ、予定通りシーズンを開幕できるようにするため」と説明していた。にもかかわらず、オーナー側はその後43日間も交渉の席に着こうとしなかった。

 それに、2月28日を予定通りシーズンを開幕させるためのデッドラインとしたのもオーナー側だ。本気で事態を解決したいのなら、必ずしも28日にこだわる必要はなかったし、いくらでも柔軟な対応はできた(事実、交渉が進んだことでデッドラインは1日延びた)。

 デッドライン間際に至っても、オーナー側は最低年俸の引き上げを年1万ドル、戦力均衡税については100万ドルというように、まるで小馬鹿にしたような対案しか提示しなかった。これでは、意図的に交渉を決裂させようとしていたとしか思えない。
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