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MLB

「三振率の改善」に「4シームの精度向上」――大谷翔平、“2022年飛躍の課題”をMLB解説者が徹底解剖!<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2022.04.07

NPBでは史上最速165キロを記録した速球も、MLBでは割と打ち込まれていた?(C)Getty Images

NPBでは史上最速165キロを記録した速球も、MLBでは割と打ち込まれていた?(C)Getty Images

 では、投手・大谷の改善点はどこにあるだろうか。最も重要なのが4シームの精度向上だ。周知のように、大谷の4シームは100マイルを超えるのも珍しくなく、平均球速95.6マイルはMLB全体でも上位に位置する。

 にもかかわらず、昨季は被打率.294とかなり打ちこまれていた。ヒートマップを見ると、コースがかなり真ん中に集中し、コマンド(狙ったスポットに投げる能力)にも問題があったと指摘できる。この点は、被打率.158だったジェイコブ・デグロムや、同.193だったマックス・シャーザー(ともにメッツ)ら一流投手に比べると大きく劣る。

 だが、この点について解説者の黒木知宏氏は、大谷がすでに昨季途中から対策を取っていたと指摘する。前半戦は投球全体の5割以上を占めていた4シームの割合を後半戦は減らし、代わってスライダーを多投するようになったのだ。とくに9月に入ると、スライダー(33.1%)が4シーム(30.4%)の割合を上回るほどだった。

 また、大谷は昨季から新たに導入したカッターの割合を増やしている。これは、投手のまま打席に立つことが多かったため、「できるだけ球数を少なくして、長いイニングを投げる方法とは何かを模索していた」からだ、と黒木氏は指摘する。

 多少甘く入っても詰まらせて凡打にできるカッターやスライダーを早いカウントから投げて球数を減らし、長いイニングを稼ぐ。後半戦はこのスタイルが確立されていた。実際、前半と後半の投球成績を比較すると、奪三振率が11.69から9.81へ低下した代わりに、与四球率は4.70→1.28と大きく改善。安定感抜群の投球に直結した。
 だが、だからといって4シームの改善が必要ない、ということはない。洗練さの度合いが増した投球スタイルに、デグロムやシャーザー並みの4シームが加わればまさに鬼に金棒。それこそ、サイ・ヤング賞受賞も現実味を帯びてくるはずだ。

 もう一つの課題は対左打者対策だ。被OPS.733は対右打者(.536)より200ポイント近くも悪い数字で、右打者には230打数で3本塁打しか打たれていないのに対し、左打者には243打数で12本もスタンドに運ばれた。

 岩村氏が「代名詞のスプリッターですら左打者には比較的見極められやすかった」と指摘するように、左打者には絶対的に頼れる球種を欠いていたことが伺える。

 一般的に右投手は左打者を苦手としているが、その理由は黒木氏いわく「右投手は左打者の対角線に(ボールを)投げ込むのは難しいからだ」という。その対策として黒木氏が勧めるのが、「インコース高めへのカッター」のように、バットの芯から遠いグリップの部分でひっかけさせるボールだ。フライボール革命全盛の現代では、バットを下から入れてくる打者が多いため、低めではなく高めに投げる方が窮屈なバッティングをさせられるからだ。

 データを見る限り、大谷は左打者に対しては4シームとスプリッターが中心で、カッターはほとんど投げていない(6.5%)。スライダーもあまり左打者には使っていない(16.0%)が、被打率は他の球種よりも低い(.256)。配球の変化で苦手意識を克服できるか、あるいは他の対策を打ってくるのか。対左打者の投球も、22年の成否を左右するファクターになるだろう。

取材・文●SLUGGER編集部

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