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プロ野球

井口監督のぶれない決断。“完全試合”で佐々木朗希を降板させた、「世界の宝」を預かる男の覚悟と見据える未来

新井裕貴(SLUGGER編集部)

2022.04.18

 続投して故障するとは言い切れないし、どれだけ慎重に扱っても怪我リスクはある。しかし、「未来が分からないから投げさせていい」というマインドは、これまでの高校野球、あるいはプロ野球でもあった酷使の発想だ。

 だがロッテは、少しでも大きなマイナスになる可能性があるのなら、それは選ばずに、「過保護」と批判されようともとにかく守る。そこに球団の、日本の、いや“世界の宝”を預かる者としての覚悟がにじみ出ている。

 佐々木がプロ入りした同じタイミングで、ロッテには同じく本格派右腕の種市篤暉が台頭した。19年途中から先発入りした種市は23イニング連続奪三振のプロ野球記録(当時)を達成するなど、プロ3年目で飛躍。

 しかしその年の17先発中14回で100球以上を投げ、翌年は130球超えが2回、136球での完封劇もあったが、その数登板後に故障し、まだ一軍復帰を果たしていない。こうした苦い経験も、佐々木の慎重な育成プランに影響しているのも間違いないだろう。
 
 我々は今、歴史的な怪物のピッチングを目撃している。それを1試合単位で見たいのか、それとも来年、5年後、10年後という長いスパンで見たいのか。ロッテが見据えているのは常に後者。長期間にわたって佐々木が活躍することを信じている。そして、長くその活躍を見るためにはどうすべきなのかに思考を巡らせている。

 今後、佐々木が一年しっかり先発を守って耐久性が向上すれば、100球前後で降板ということ自体がなくなるだろう。佐々木はまだ“発展途上”なのだ。実際、3試合連続の100球超えが影響したのか、この日は終盤にフォークが浮き、ストレートも本来の軌道からずれるなど課題も見えていた。井口監督も快挙が見たかったことは認めつつ、「先々のことを考えれば」「1年間ローテーションをしっかりまわることとかを加味すると」と語っている。

 やはりロッテ陣営が見据えているのは、短期ではなく未来なのだ。そして佐々木が順調に成長していけば、2試合どころか何試合にもわたって完全試合を成し遂げることだってあるはずだ。それこそが、ロッテが思い描く、本当の“楽しみ”なのである。

文●新井裕貴(SLUGGER編集部)

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