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プロ野球

沖縄に新球団誕生! DeNA出身の球団社長が目論む新規参入への青写真

岩国誠

2019.11.19

球団GMの田尾安志氏。撮影:岩国誠

球団GMの田尾安志氏。撮影:岩国誠

 チーム作りをしていく上で、小林氏が最初に声をかけたのは、東北楽天・初代監督の田尾安志氏(65)だった。

「もともと監督候補を探していたのですが、奥様のお父様が沖縄で病院を建てられている方です。長い間沖縄とのつながりがある方ということで、声をかけさせていただいた。ただ、常駐は難しいというところで、GMという形で参加していただきました」

 田尾GMとともに、各自治体やNPB12球団、独立リーグ関係者や海外球団などとの折衝を進める中、チーム人事も進めてきた。内定選手第1号は今季、大和高田クラブ(奈良)でプレーした沖縄出身の元東京ヤクルト・比屋根渉外野手(32)。そして、監督には今季まで2年間、千葉ロッテで投手コーチを務めた清水直行氏(43)。さらには、ソフトバンクと横浜DeNAでプレーした井手正太郎氏(36)の打撃コーチ就任が相次いで決まった。

 監督の清水は現役時代に高い実績があるとはいえ、沖縄にゆかりのない人物だ。
 その招聘理由について、小林氏はこう語る。
「清水さんは、僕との現役時代の縁もありますが、ニュージーランド野球連盟ゼネラルマネージャーや同国代表の統括コーチに就任するなど、異国の地で野球振興を行ってきたという部分が大きかった。私たちがこれからやっていくことは、初めてのことになるので『新たな挑戦ができる人材が欲しい』というところで、一緒にチャレンジできる方が欲しかった。ゼロから作っていく上で、そこを大事にさせていただいた」。

 NPB参入という大いなる挑戦を意欲的に捉えた清水氏のフロンティアスピリッツ。小林氏にとって、そこが監督招聘への大きな決め手となっていた。事実、清水監督は、就任記者会見で「こう言う機会をいただいて、チャンスだと思った。チャレンジするという思いが強かった」と熱く語っている。

 比屋根選手以外の選手の確保については、11月6日に沖縄・浦添でトライアウトを開催した。80名の選手が集まり、その中には、四国IL・香川で今季セーブ王を獲得した又吉亮文投手(24)や、BCリーグ・石川で2年連続盗塁王を獲得した神谷塁内野手(24)など、今年のNPBドラフト候補にも挙げられてていた沖縄出身の選手たちの姿があった。

 今後は、20日に球団公式ホームページとTwitterでトライアウト合格者を発表する。NPB12球団合同トライアウトの結果を受けて、スカウトする元NPB選手たちと合わせて30名前後を獲得し、12月中旬には入団選手発表の記者会見を行う。

 来年1月25日に沖縄・東風平運動公園野球場でキャンプインし、3月上旬には、NPB球団とのこけら落としゲームを行う予定だ。ただ、その対戦相手や試合日程について、現時点での公式発表はない。その姿勢に小林氏も懐疑的な見方があることは、十分に認識している。

「周りの方の反応も、『どことやるの?』という疑問に思っていることが多いので、『早く発表しないと』というのはありますが、言える段階になってから発表したいと思います。そこをはっきりしていけば、皆さんも疑問も払拭できると思っています」

 球団ロゴには、かつて沖縄県が琉球王国と呼ばれていた時代に中国との交易で使われ、琉球王国の繁栄を築いたという「進貢船」がモチーフに描かれている。

「琉球ブルーオーシャンズ」。

 大いなる可能性を秘めた新たな船が、プロ野球参入という未開の大海原へ漕ぎ出した今、その先に何が待っているのか。プロ野球の新たな可能性を秘めたその航跡に、今後に注目していきたい。

文●岩国誠(フリーライター/映像ディレクターほか)

【著者プロフィール】
いわくに・まこと/1973年生まれ。元々はプロ野球のニュース番組制作に携わるTV映像ディレクター。8年前から5年間、SNSなどでの球団公式映像やパ・リーグTVでの制作・配信を経験。その縁から昨年より、フリーライターとして、webメディアでのプロ野球記事の執筆を始める。また、舞台俳優としての経験を生かして、野球イベントなどの運営や進行役など、幅広い活動を行っている。

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