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プロ野球

【オールスター珍プレー3選】「真剣勝負」か「お祭り」か――名将の“価値観の相違”で幻になったイチローvs松井の黄金対決

筒居一孝(SLUGGER編集部)

2022.07.26

▼オールスター史上初のランニング本塁打を達成した鈍足選手

 MLBオールスターゲームでは、07年のイチローだけが記録しているランニングホームラン。日本の球宴に目を移すと達成者は4人いる。もちろん、イチローのように俊足の打者ばかり……と思いきや、鈍足が代名詞のような選手も記録している。1970年の遠井吾郎(阪神)だ。

“仏のゴローちゃん”の異名があったこの遠井は、大らかな性格を体現するようなぽっちゃり体形。いつも巨体を揺らしながら、えっちらおっちら走っていた。当然、ランニング本塁打なんてプロ生活どころか、生涯でも打ったことがなかった。

 だが、広島市民球場で行なわれた70年のオールスター第3戦で奇跡が起こる。4回2死一、二塁の場面で代打に出た遠井は、ライト線に火の出るような当たりを放つ。「タイムリーツーベースだ!」と全セのベンチは大喜びしたが、ライトを守っていたジョージ・アルトマン(当時ロッテ)が、芝生に足を取られて転倒。しかもその際に左肩を強打したため、痛みで起き上がれなくなってしまった。

「これぞ生涯唯一のチャンス!」とばかりに、遠井は激走。必死になってダイヤモンドを1周し、見事史上2人目のランニング本塁打を成し遂げた。快挙後の感想は、肩で息をしながら「死ぬかと思った」であった。一世一代の快走に全セベンチは爆笑で祝福した。
 
▼「代打・野茂!」が実現したのはファンサービスじゃなかった?

 97年にイチローが登板した際、「真剣勝負なのに」と憤った野村監督によって「代打・高津」がコールされた話は前述したが、その6年前の91年の球宴でも、実は投手が代打として送られたことがあった。

 7月24日、広島市民球場で行われた第2戦は、セ・パ両軍が一歩も譲らず、延長戦に突入する死闘となった。12回表、2死一塁の場面で打席に立った秋山幸二(西武)が、自打球を右目に当ててプレー不可能に。当然、全パの森祇晶監督(西武)は代打を出そうとしたが、すでにベンチ入りの野手をすべて使い果たしてしまっていた。

 そこで森監督は特例措置として、すでに出場済の佐々木誠(ダイエー)の再出場を認めてほしいと申し入れた。全セの藤田元司監督(巨人)は快諾したが、審判団が拒否。「ルールを曲げるわけにはいかない」と頑として聞き入れなかった。

 となれば、出場していない投手を代打として出すしかない。そこでコールされたのが野茂英雄(近鉄)だった。当然ヘルメットなんか持ってない野茂は、オリックスのヘルメットをかぶって苦笑いしながら登場。すでにカウントは2-2だったので、野茂は最後の1球を見送って無事(?)三振に倒れた。

 だが、この珍プレーには続きがある。12回裏の守備で、全パは秋山に代わるレフトに、やむなく投手の工藤公康(西武)を起用。しかも、2死から運悪く左中間にフライが飛んだ。よせばいいのに工藤はこの打球を追いかけ、センターの愛甲猛(ロッテ)に危うく激突しそうになるドタバタ劇(打球は愛甲がキャッチ)。試合はこれでゲームセット、すったもんだの末、3対3の引き分けに終わった。

文●筒居一孝(SLUGGER編集部)

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