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目を覆わんばかりの拙守と球界屈指のスプリントスピード――ジョー・アデルが潜在能力を開花させる日は来るのか<SLUGGER>

久保田市郎(SLUGGER編集長)

2022.08.02

 高校時代から木のバットで140m近い特大アーチを放ち、60ヤード(約55m)ダッシュでは6.4秒、投げても最速95マイル(約153キロ)を計時していたというアデル。だが、2017年にドラフト全体10位で指名された当時のスカウティング・レポートで、次のように書かれていたのは示唆的でもある。「これらの素質をどれだけ野球のスキルに還元できるかが、スーパースターになれるかどうかを左右するだろう」。

 大先輩のトラウトからは「持っている素質の60%~70%でも発揮できれば十分だ」と言われているというアデル。ということは、今はまだ20%くらいしか出せていないということなのか。それとも、素晴らしい身体能力を「野球のスキルに還元できないまま」終わってしまうのか。
 
 快足と強肩好守で15年のロイヤルズ世界一に貢献したロレンゾ・ケインは、優れた資質を「野球に還元」できたアスリートの一人だった。何しろ彼は、高校に入るまでまともに野球をしたことがなかったのだ。高校のバスケットボール部の入団テストに不合格となり、母親からはアメリカンフットボールを禁じられたため、仕方なく野球を始めた男は最終的にMVP投票3位に入るまでの選手になった。

 アデルにもまだチャンスがあると思いたい。だが、その一方で、厳しいメジャーリーグの世界でいつまでも優先的にチャンスが与えられるわけではないのも事実。エンジェルスの2022年シーズンは事実上終わってしまったが、アデルにとっては生き残りを賭けた戦いが今後も続く。


 
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