一関学院の高橋滋監督はこう語る。

「ここ数年は花巻東や盛岡大付、そういうチームに勝たないと甲子園にはいけないと常々言ってきていました。ピッチャーの負担を減らすためには打力を強化しなければ甲子園には辿り着けないなと強化してきたつもりでした。県大会決勝では（岩手県ナンバーワン投手と呼び声高い盛岡中央高の）斎藤（響介）くんを打ち崩せたことは、甲子園を戦う意味では大きかったなと思います。特別なことをしてきたわけではないんですけど、全体練習の後に、選手が自主練習で毎日欠かさず打ってきたことがつながったのかなと思います」

　県大会準々決勝の盛岡大付戦は、相手打線のお株を奪う９安打８得点で７回コールド勝ち。決勝戦では、最速150キロを計測する盛岡中央のエース斉藤に９安打を浴びせて攻略し、甲子園切符をつかんだのだった。

　いわば今年の一関学院は、伝統の固い守備だけではなく、昨今の岩手県のハイレベルな争いで揉まれる中で攻撃力を上乗せしたことで、甲子園出場をかなえたというわけだ。
  　３番を打つ小杉晟も言う。

「自分たちのチームは“守備のチーム”でやってきたんですけど、守備ももちろんですけど。打撃を上げなきゃこの先は勝っていけないっていうのがあった。新チームの立ち上げの時から打撃の強化は強く意識しました」

　優勝候補に挙げられていた京都国際、それもプロ注目の左腕・森下を攻略しての初戦突破は、12年ぶりに甲子園へ出場したチームにとって、大きな自信をもたらすだろう。

　県下２強ではなくとも、岩手を勝ち抜いたチームには力がある。

　一関学院の見事な攻撃は、それを証明したように思う。

取材・文●氏原英明（ベースボールジャーナリスト）

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき／1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』（新潮社）、『メジャーをかなえた雄星ノート』（文藝春秋社）では監修を務めた。根尾の二刀流については、YouTubeチャンネル「野球を正しく伝えるチャンネル」でも論じている。