この時、富田の球数はすでに100球に達していた。
自チームの攻撃時間は短い一方で、投げている時は多くの球数を投じなければならない。冨田は一人奮闘していたが、これがチーム力の差というものだった。6回に1点を失うと、さらに7回には致命的な3点を失って、試合の趨勢は決まった。冨田は8回から、2番手の前田一輝にマウンドを譲ることとなった。試合が進むごとに強豪校の圧力に押し切られた形だった。
冨田は試合をこう振り返っている。
「相手バッターにしっかり粘られて、甘く入った球を長打にされて点を取られてしまった。逆転された後も粘れなかったのは反省点だと思います。序盤は、本調子とは言わないんですけど、自分のボールを投げれたと思います。でも、終盤にしっかり相手チームに粘られて、球数を投げさせられて甘くなったところを捉えられた。山田くんはピッチャーとしての技術はもちろんなんですけど、気持ちの強さというかメンタル面がとても強いと感じました」
鳴門はセンバツでは1回戦で大阪桐蔭高と対戦し、1−3で惜敗。大阪桐蔭打線はその後手がつけられなくなったから、冨田のピッチングがいかに凄かったかが後にクローズアップされることとなった。この試合も、ドラフト候補の相手エース・山田との投げ合いが、大会屈指の好カードとして注目を浴びた。
「春夏連続で甲子園に出場して、その初戦で両方負けてしまったんですけど、対戦相手が、選抜の優勝校と準優勝校ということで良い経験ができて、反省点も良い点も見つかった試合になりました」
そう振り返った後、大阪桐蔭と近江との対戦で得られた自信と課題を尋ねると、こう答えた。
「自分の中ではしっかり投げ切れたボールは通用していたと思うんで、投げ切ることが大事だと思いました。レベルが違うと感じたのはやはりピンチになっても、山田くんはしっかり自分に自信を持って投げきっていました。そこに違いを感じましたね」
4回の連続三振劇は唸りたくなるような圧巻の投球だった。ポテンシャルを見せる場面もあった。それでも試合は負けたが、春と夏、プロに行くであろう選手たちと肌を合わせたサウスポーが今後どうなっていくかは気になるばかりだ。
取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
自チームの攻撃時間は短い一方で、投げている時は多くの球数を投じなければならない。冨田は一人奮闘していたが、これがチーム力の差というものだった。6回に1点を失うと、さらに7回には致命的な3点を失って、試合の趨勢は決まった。冨田は8回から、2番手の前田一輝にマウンドを譲ることとなった。試合が進むごとに強豪校の圧力に押し切られた形だった。
冨田は試合をこう振り返っている。
「相手バッターにしっかり粘られて、甘く入った球を長打にされて点を取られてしまった。逆転された後も粘れなかったのは反省点だと思います。序盤は、本調子とは言わないんですけど、自分のボールを投げれたと思います。でも、終盤にしっかり相手チームに粘られて、球数を投げさせられて甘くなったところを捉えられた。山田くんはピッチャーとしての技術はもちろんなんですけど、気持ちの強さというかメンタル面がとても強いと感じました」
鳴門はセンバツでは1回戦で大阪桐蔭高と対戦し、1−3で惜敗。大阪桐蔭打線はその後手がつけられなくなったから、冨田のピッチングがいかに凄かったかが後にクローズアップされることとなった。この試合も、ドラフト候補の相手エース・山田との投げ合いが、大会屈指の好カードとして注目を浴びた。
「春夏連続で甲子園に出場して、その初戦で両方負けてしまったんですけど、対戦相手が、選抜の優勝校と準優勝校ということで良い経験ができて、反省点も良い点も見つかった試合になりました」
そう振り返った後、大阪桐蔭と近江との対戦で得られた自信と課題を尋ねると、こう答えた。
「自分の中ではしっかり投げ切れたボールは通用していたと思うんで、投げ切ることが大事だと思いました。レベルが違うと感じたのはやはりピンチになっても、山田くんはしっかり自分に自信を持って投げきっていました。そこに違いを感じましたね」
4回の連続三振劇は唸りたくなるような圧巻の投球だった。ポテンシャルを見せる場面もあった。それでも試合は負けたが、春と夏、プロに行くであろう選手たちと肌を合わせたサウスポーが今後どうなっていくかは気になるばかりだ。
取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
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