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プロ野球

「自分のために、家族のためにやろう」――阪神が泥沼から立ち直った主因は“発想の転換”を施したブルペン改革にあり

チャリコ遠藤

2022.08.10

文字通り虎視眈々と「獲物」を狙う猛虎を率いる矢野監督。そんな指揮官にもシーズンが進むごとに明るさが見え始めている。写真:田中研二

文字通り虎視眈々と「獲物」を狙う猛虎を率いる矢野監督。そんな指揮官にもシーズンが進むごとに明るさが見え始めている。写真:田中研二

 救援陣の立て直しのきっかけに関して、ブルペンを預かる金村暁1軍投手コーチは、こう明かす。

「中継ぎ陣には俺が最初(開幕直後)に言った。最初はボロボロのスタートだったから『とりあえず、(防御率を)0.00に近づけていこう』と。個々でね。自分のために、家族のためにやろう。それがチームのためになるから」

 金村コーチはパフォーマンスよりも、まずは発想の転換を促したのである。

 もちろん、運用面にも注力した。中継ぎ陣は実際の登板だけでなく、ブルペンでの待機という表には見えない“登板”が存在する。1日に何度も肩を作り、球数はその都度、増えていく。長いシーズンを考えれば決して無視できない蓄積だ。実際、昨年に初めて本格的に中継ぎに転向して46試合に登板した岩貞は待機の影響もあってシーズン後半にパフォーマンスが低下。金村コーチも「待機が多すぎた」と苦い表情で振り返る。

 その反省も踏まえて、今季は待機を減らす方策を施している。「『同点になったら』『勝ち越されたら行く』っていうのは無しにして。このバッターでピンチだったら行くというのを徹底してやった方がピッチャーも準備できるし、気持ちも作りやすいし、待機も減る。〝あと1人いこう〟とかは無くして」(金村コーチ)。臨機応変ではなくある意味で“決め打ち”の起用が各々の負担を減らしてプラスの相乗効果を生んでいる。
 
 4月上旬から守護神を託された岩崎は言う。

「(ブルペンの)それぞれが役割を分かってきたし、準備もしやすくなってきてる。若い選手には自分たち上の世代が助言や意見交換もしていっているので」

 勝ちパターンを担う浜地、湯浅は昨年まで1軍での登板は数えるほどで実質1年目。それでも、彼らの経験不足を周囲にいる先輩たちがしっかりとカバーしている。浜地は7月20日の広島戦で2点リードの7回に登板して救援に失敗。それでも、2日後の横浜戦で3点リードの7回に起用されると3人斬りでリベンジした。

「2回も同じ失敗を続けてブルペンにいられるほど甘くない。自分にプレッシャーをかけて投げた」と浜地は言う。いつ取って代わられるか分からない。そんなチーム内での生存競争の激しさも、個々のパフォーマンス向上につながっているのは間違いない。

 近年の阪神ブルペンはメンバーが入れ替わっても絶対的な安定感を誇示してきた。そんなストロングポイントがようやく勝利に直結し始めているシーズン後半戦。首位を独走するスワローズの背中はまだ遠いが、牙をむき出して獲物を狙う虎の疾走に失速の気配はない。

取材・文●チャリコ遠藤

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