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高校野球

“王者”が“王者”であったがゆえの番狂わせ――大阪桐蔭が下関国際に敗れた理由<SLUGGER>

氏原英明

2022.08.19

 ランナーを三塁に背負った時の守り方は、確かにそれぞれだ。今大会でもさまざまな守り方をしてくるチームがあったが、傾向としてリードしている時やイニングの浅いうちは、前進守備を敷かないというチームは少なくなかった。

 例えば、この日の第1試合、愛工大名電高は1回裏無死二、三塁のピンチで前進守備を敷かなかった。「1点ならOK」という守り方をした。また、15日の3回戦で明秀日立高は、三塁走者を背負った際、前進守備の陣形を取りつつ、対右打者は遊撃手が定位置まで下がり、対左打者の場合は二塁手が定位置まで下がるなどの特殊な守り方をしていたのだ。

 2回戦で前回大会の覇者・智弁和歌山高を破った国学院栃木高は、2対2の同点の6回表1死二、三塁でも、内野陣が打者の長打力を警戒して深く守った。結果、セカンドゴロの間に1点を失ったものの、失点はそれだけ。そして、その裏に逆転に成功している。

 国学院栃木の柄目直人監督はこう語っている。

「素晴らしいバッターというのはヒットゾーンに打つのがうまいので、ヒットゾーンに守っていればいいんじゃないという感覚でポジションを敷いています。6回表のあの場面では強打でロングヒットを打たれた方が嫌なので、後ろに下がっていれば1点で済むかなと思っていた」
 
 長くなったが、いわば三塁走者の生還だけにこだわらずに守っていく戦い方は、ともすれば昨今の高校野球において試合を左右する重要なファクターにもなり得る。

 そこで、今回の大阪桐蔭だ。この3回からの前進守備は、目先の1点を防ぐことに固執するようになった。その結果どうなったか。まず、この3回の一死三塁のピンチでは、結局、目論見に反して1点を失った。

 そもそも前進守備の欠点はいくつかある。

 一つは、目先の1点を固執するあまりピンチを拡大しかねない点だ。内野陣が前を守るため、確かに前方のゴロに対してはホームで刺しやすくなる。しかしその一方で、後方に広いヒットゾーンが生まれ、相手がチャンスを生み出しやすい。「バットに当てれば何とかなる」と、かえって打者心理を優位に働かせる。

 事実、この場面はそうなった。下関国際の2番・松本竜之介は、ちょこんとバットに合わせてレフト前に打球を落とした。初回、大阪桐蔭に2点の先制を許した後の反撃の1点で、これが下関国際にどれほどの勇気を与えたかは想像に難くない。

 試合はここから目まぐるしく動く。
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