プロ2年目で、今季も抜群の安定感を誇示してローテーションの軸となっているのが伊藤将司も、酸いも甘いも知る左腕に小さくない影響を受けたひとりだ。
20年に阪神を退団した能見とは入れ違いながら、今年1月には「能見さんは三振を取れる投手。自分もそうなりたい」と先輩の坂本誠志郎を通じて弟子入りを志願し、合同自主トレ参加にこぎつけた。
思い切って飛び込んだ空間で手にしたのは、進化のヒント。とりわけ深く突き刺さったのは、当たり前のようにも思える「直球の重要性」だった。
「調子が悪い時はやっぱりストレートが軸になると教えてくれた。能見さんと話して、基本はストレートが大事なんだと感じた」
伊藤将には1年目に苦い経験があった。疲労がピークに達しようかという夏場に原点を見失ったのだ。24歳の左腕は言う。「悪い時に変化球でかわそうという意識があった。調子が悪い時にどう原点に戻るかというのは分かっていなかった」と。
能見はキャンプ中盤まで変化球を封印し、ブルペンでひたすら直球を投げ込む独自の調整法を貫いてきた。言うまでもなく、投球の軸となるからだ。直球あっての変化球。プロ18年目の大ベテランが言葉と行動で示す直球との向き合い方は、24歳の“道標”になった。
調整法だけでなく、フォークの握りも教わった伊藤将は、いわゆる2年目のジンクスを感じさせない質の良い投球を今季も続けている。2年連続の2桁勝利も目前だ。少しの勇気を振り絞って生まれた能見との出会いは、阪神における「左腕エース」の系譜を継ぐ若虎の財産になった。
決して多くを語るタイプではなく、どちらかと言えば背中で示すタイプだった。だが、それはメディアや筆者が目に見える範囲での話なのだろう。本人は口にしなくても、阪神の後輩たちの言葉に耳を傾ければ、「能見篤史」という存在は感じざるを得ないものがあった。
梅野は言う。
「オリックスに行ってからも自分の状況を把握しながら電話をくれたり……。本当に何でも気にしてくれる。厳しさを与えてくれる、言ってくれるからこそありがたかった。野球人としても、人としても大好きな先輩なので」
能見篤史。彼が“残したもの”は、これからも生き続け、甲子園で躍動する選手たちの活力になる。
取材・文●チャリコ遠藤
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思い切って飛び込んだ空間で手にしたのは、進化のヒント。とりわけ深く突き刺さったのは、当たり前のようにも思える「直球の重要性」だった。
「調子が悪い時はやっぱりストレートが軸になると教えてくれた。能見さんと話して、基本はストレートが大事なんだと感じた」
伊藤将には1年目に苦い経験があった。疲労がピークに達しようかという夏場に原点を見失ったのだ。24歳の左腕は言う。「悪い時に変化球でかわそうという意識があった。調子が悪い時にどう原点に戻るかというのは分かっていなかった」と。
能見はキャンプ中盤まで変化球を封印し、ブルペンでひたすら直球を投げ込む独自の調整法を貫いてきた。言うまでもなく、投球の軸となるからだ。直球あっての変化球。プロ18年目の大ベテランが言葉と行動で示す直球との向き合い方は、24歳の“道標”になった。
調整法だけでなく、フォークの握りも教わった伊藤将は、いわゆる2年目のジンクスを感じさせない質の良い投球を今季も続けている。2年連続の2桁勝利も目前だ。少しの勇気を振り絞って生まれた能見との出会いは、阪神における「左腕エース」の系譜を継ぐ若虎の財産になった。
決して多くを語るタイプではなく、どちらかと言えば背中で示すタイプだった。だが、それはメディアや筆者が目に見える範囲での話なのだろう。本人は口にしなくても、阪神の後輩たちの言葉に耳を傾ければ、「能見篤史」という存在は感じざるを得ないものがあった。
梅野は言う。
「オリックスに行ってからも自分の状況を把握しながら電話をくれたり……。本当に何でも気にしてくれる。厳しさを与えてくれる、言ってくれるからこそありがたかった。野球人としても、人としても大好きな先輩なので」
能見篤史。彼が“残したもの”は、これからも生き続け、甲子園で躍動する選手たちの活力になる。
取材・文●チャリコ遠藤
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