専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
プロ野球

日本シリーズ第2戦はただの引き分けではなかった。激闘の中で明確な「優位」を示したのは――

氏原英明

2022.10.24

 そして第2戦。オリックス打線はなかなかつながらず、3点を挙げるのがやっとだったが、投手陣は快調だった。

 先発の山崎福也が4回無失点とゲームメイクし、自らタイムリーも放って流れをつかみ、5回からはブルペンに託した。山﨑颯、宇田川、ワゲスパックのリレーで、8回まで無失点リレーを継続した。

 9回を担ったクローザーの阿部も、カットボールとスプリッターを駆使したパワーピッチングが持ち味だった。完封リレー完成は目前と思われたが、先頭の代打・宮本丈にストレートを捉えられていきなり二塁打を許してしまう。続く1番の塩見には四球を与え、ピンチを広げて代打の内山を迎えたのだった。

 内山には初球、スプリッターで1ストライク。2球目はカットボールで空振り。3球目もカットボールでファール。これで追い込んだ。しかし、4、5球目にスプリットを続けると、これを見切られた。そしてカウントが2-2となったところで、ストレートを完璧に捉えられたのだった。

 1戦目にヤクルト打線でストレートを弾き返すことができたのは、塩見泰隆と中村悠平だけだった。先制タイムリーのオスナもカーブを打ったものだったし、本塁打もカットボールが抜けたものだ。村上が平野から打ったのもスプリットだった。

 ストレート勝負なら、打たれることはない――。オリックスが1戦目を終えて感じていた手応えは、この2戦目の9回裏土壇場で完全にひっくり返されてしまった。
 
 しかも、反撃の口火を切った宮本も、同点3ランの内山も、ともにスタメンに名を連ねていなかった選手だ。このことは、試合の結果以上に大きなものと言えるのではないか。

「(内山は)途中から試合に入って行っても、相手投手がどんな球を投げてくるかを予想することができて、思い切って勝負ができる選手」

 ヤクルト・高津臣吾監督のそんな評価が、この日の起用につながったのだろう。内山の立ち位置は、この短期決戦で大きく変わってくるのは間違いない。そうなった時、ヤクルト打線の怖さは計り知れない。
 
 この引き分けが意味するものは何か――。

 確かに、シリーズの勝敗に変化はなかった。

 しかし、結果の背後にある戦いぶりという意味において、状況は大きく前進したのではないか。

文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号