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明確な「基準」がない中で誰を選ぶべきなのか。アメリカ野球殿堂入り投票権を持つ日本人記者の悩み<SLUGGER>

ナガオ勝司

2022.12.26

アメリカ野球殿堂から郵送された投票用紙。記者たちは殿堂入りに値する選手の名前欄にチェックを入れて返送する。

アメリカ野球殿堂から郵送された投票用紙。記者たちは殿堂入りに値する選手の名前欄にチェックを入れて返送する。

 また、通算2461安打&377本塁打のジェフ・ケント二塁手(ジャイアンツほか)、通算2877安打&404盗塁のオマール・ビスケル遊撃手(インディアンズ=現ガーディアンズほか)らが昨年に引き続き、票を集めると予想されている。

 そこにスイッチヒッターとして歴代4位の通算435本塁打、同3位の1587打点、通算2725安打&312盗塁を記録し、今年から候補者となったカルロス・ベルトラン外野手(ロイヤルズほか)や、歴代4位の437セーブを記録したフランシスコ・ロドリゲス(エンジェルスほか)らが食い込んでくる見込みで、それだけでもう最大投票数の10人中8人が埋まる。

 必ずしも、最大投票数を投じなければならないわけではないので、「殿堂に見合う選手は1人だけ」と思えば、1人だけに投票すればいいし、実際にそうしている人もいる。私が初めて投票した時、地元シカゴのベテラン記者にアドバイスを求めた時には、主観的だけれども、心に響く話をされたものだ。

「BBWAA10年で投票権を得られるというルールはつまり、投票者が現場で実際に彼らの現役時代の一部を見てきたということ。殿堂に入るような選手は、その時から『こういう選手が殿堂入りするんだろうな』って分かるはずなんだ」

 なるほど、マリアーノ・リベラやデレク・ジーター(ともにヤンキース)、オティーズら、自分が過去に投票して殿堂入りした選手はすべて、現役時代に『こういう選手が殿堂入りするんだろうな』と思って見ていた選手ばかりだ。
 正直、今年の候補者でそんな風に感じられた選手はほんの数人だ。

 それでも、成績を精査していく段階で「殿堂入りに見合う成績なのではないか?」と考え直し、「貴重な10票」をすべて投じることにした。

 それはたとえば、三塁手として歴代3位の通算8度のGG賞、通算7度のオールスター選出のローレンや、外野手として史上3位タイのGG10度のジョーンズ、二塁手で歴代最多の377本塁打を放ったケント、さらに遊撃手として歴代最多の2709試合出場&(守備側として)1,744併殺記録、歴代2位のGG通算11度のビスケルらのことである。

 かつては「投手なら通算300勝以上、打者なら3000安打以上」が殿堂入りへの「通行手形」のように言われていたが、それは昔も今も殿堂入りの「最低条件」ではないし、セイバーメトリクスが定着した今では、「通算WAR70以上が目安」などと言う人もいる。

 だから、現行の投票方式に異議を唱える人は多く、私も投票のたびに、膨大な資料を前に頭を悩ませることになる。

 投票結果発表は来年1月25日。すでにSNSなどで投票内容を明かしている記者も少なくないが、私はここでは書かない。私に言えるのは、今年の候補者の現役時代、「こういう選手が殿堂入りするんだろうな」と感じたわけではないのに、規定における最多の10人に投票を投じたということだけだ。

 興味がある方は、全米野球記者協会のホームページにある殿堂入り欄でチェックしていただきたいと思う。

文●ナガオ勝司

【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO
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