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堕ちた英雄がWBCで見せた意地の復活劇――イタリア代表マット・ハービーの『ダークナイト・ライジング』<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2023.03.15

 怪我や不振以上に問題だったのが、私生活の不品行だった。プロ入りから瞬く間にスターダムへのし上がったことで、ハービーに驕りと慢心が生まれていたのだ。

 テレビのトークショー番組に出演し、ロシア出身のスーパーモデルと浮名を流し……といった華やかな生活を送るうちに、いつしかハービーは野球選手としての原点を見失ってしまっていた。夜な夜なナイトクラブに入り浸り、登板日の朝まで飲み明かすこともあった。17年5月には、仮病で練習をサボってゴルフに興じ、球団から出場停止処分を受けた。

 バットマンの正体であるブルース・ウェインは、ヒーローであることを隠すために普段は放蕩者を演じているが、ハービーの場合は「仮の姿」ではなかった。私生活が荒れ放題の選手が活躍できるほどメジャーリーグは甘い世界ではない。ハービーは文字通り、真っ逆さまに転落していった。

 18年5月に事実上の戦力外となってメッツを退団。その後はレッズ、エンジェルス、アスレティックス、ロイヤルズ、オリオールズと渡り歩いたが、かつてニューヨークを震撼させた快投は蘇らなかった。昨年2月には、エンジェルス時代の19年に薬物中毒で急死したタイラー・スキャッグスとともにコカインを使用していたことを告白し、60試合の出場停止処分を受けた。
 
 昨年11月にオリオールズからフリーエージェント(FA)となり、浪人状態だったハービーを拾い上げたのがWBCに出場するイタリアだった。

 今大会のイタリアは、一時はメジャーの有力選手が複数参加すると報じられていたが、続々と辞退。キューバやオランダがいるプールAでは苦戦が予想されていた。そんななか、救世主となったのがハービーだったのである。

 4シームは最速でも90マイル台前半と、全盛期とは比べるべくもない。だが、ハービーの投球からは、一時はどん底まで落ちた男が、それでも最後まで捨てなかった意地と誇りが感じられる。

 オランダ戦で50球以上投げたたため、登板間隔の規定で16日の準々決勝では登板できないハービー。だが、もしイタリアが日本に勝てば、準決勝でアメリカに“凱旋”することになる。“ダークナイト”の復活劇は、一体どのような結末を迎えるのだろうか。

構成●SLUGGER編集部

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