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MLB

ブローカーから脅迫、偽造パスポートを食べて隠滅…中日助っ人で話題のキューバ人選手の破天荒な亡命秘話<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2023.03.31

●監視の目をくぐり抜けろ!

 当然、キューバ政府も相次ぐ亡命にただ手をこまねいているわけではない。亡命を試みて失敗した選手は投獄されたり、国内リーグでの出場も停止されたりと、厳しい処分が待っている。国際試合などでは政府の厳しい監視もつく。それをかいくぐって亡命するために、ユニークな方法を考え付いたのが、ロイヤルズなどで控え捕手として活躍したブライアン・ペーニャだ。

 99年5月、ペーニャはキューバ代表としてベネズエラに遠征した際、現地の友人に亡命の手引きを頼んだ。だが、監視の目があまりにも厳しかったため、2人はある取り決めを交わした。「亡命決行なら部屋の窓に緑のバッティンググラブをぶら下げておく。赤だったら延期」というものだ。

 そして、来たる決行の日。ペーニャは窓に緑のグラブをぶら下げて、監視の目を避けてトイレの窓から抜け出した。サインを読み取った友人はホテルの近くに車で待機し、ペーニャはその車に転がり込んで亡命に成功したという。
 
●偽造パスポートを隠滅した方法とは?

 元キューバ代表の主砲で、13年のWBCで活躍したホゼ・アブレイユは、その年の8月に亡命している。まず高速船でハイチに渡り、そこから飛行機でアメリカへ飛んだ。ここまでは首尾良くいったものの、一つ問題があった。ハイチを出国する際に使用したパスポートが偽造だったことだ。

 偽造パスポートの使用が発覚した場合、アメリカへの入国を断られる恐れがある。その一方で、当時はたとえパスポートを所持していなくとも、アメリカの地を踏めば永住資格を与えられるというキューバ人への優遇措置(「ウェットフット・ドライフット政策」)があったため、亡命を斡旋した業者はアブレイユに「機上で偽造パスポートを破棄しろ」と伝えていた。

 それを受けてアブレイユは、機内でビールを注文。パスポートをビリビリに破いて口に入れ、ビールで少しずつ流し込んだ。偽造の証拠を文字通り腹に収めたアブレイユは、無事アメリカに入国。10月にホワイトソックスと6年6800万ドルの大型契約を結ぶと、14年は新人王、20年にはMVPにも輝くなど、メジャーを代表するスラッガーとなった。

構成●SLUGGER編集部
 

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