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プロ野球

道なき道を切り開いてサイ・ヤング賞投手へ――トレバー・バウアーが最先端理論「ピッチデザイン」を作るまで<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2023.05.28

 ドライブラインでは、重さの異なる6種類のボールを用いたピッチング練習や、モーションキャプチャーによる動作解析などを行っていた。そうした独自の科学トレーニング法に、バウアーは夢中になった。12年の創設当初から毎年通い詰め、1秒で最大5000コマ以上の撮影が可能なエッジャートロニックカメラを自ら持ち込んでさらにトレーニングの幅を広げた。

 ドライブラインでの取り組みを通して、バウアーはボールの球速だけでなく、回転軸や回転数、回転方向や変化量などを詳細にデータ化し、どのような指のかかり方や腕の角度であれば、より効果的な球種が投げられるのかを探求した。この過程を、バウアーは「ピッチデザイン」と名付けた。
 
 これによってバウアーの投球は大きく進化し、ついにはサイ・ヤング賞を獲得するまでに至った。そして、この「ピッチデザイン」の考え方は、他の投手にも大きな影響を与えた。2000年代前半のマネー・ボール革命以降、データ分析をチーム作りに活用することは当たり前になっていたが、選手育成における有効なデータの活用法はそれまで見出されていなかった。

 バウアーの成功によって、単に「ファストボールのスピードを上げる」「変化球の曲がり幅を大きくする」といった曖昧な目標ではなく、自分の感覚とデータの具体的な数値を組み合わせてピッチングを向上させる道が他の投手にも開けたと言っても過言ではない。

 今や、プロ・アマ問わず年間500人以上の選手がドライブラインを訪れ、データ分析によって自身の才能を開花させようとしている。その中には、日本プロ野球で活躍する多くの投手も含まれる。20年オフには、大谷翔平(エンジェルス)も受講して飛躍につなげている。バウアーは、道なき道を切り拓いたパイオニアと言ってもいい存在なのだ。

 ここまで4試合に先発して防御率6.86とNPBへの適応に苦しんでいるバウアー。だが、自分の課題を分析し、成績向上のための目標を具体的に設定してクリアする能力にかけては折り紙付きだ。今後どのようにピッチングを修正してくるのか楽しみだ。

構成●SLUGGER編集部
 

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