そして昨年のチームから続く大きな課題が、太い柱となれる投手が不在な点だ。昨年秋の東北大会でも鶴岡東打線に８点を奪われて敗れており、また６月に行なわれた愛知での招待試合も、愛工大名電に25点を奪われるなど４試合で44失点を喫している。そんな中で２年生の小松龍一が昨年秋から大きな成長を見せ、故障で公式戦の登板から遠ざかっていた本格派の北條慎治（３年）が復帰する見込みなどプラス要因はある。彼らがどこまで相手の失点を防げるかが、大きなカギとなるだろう。

　県内でライバルとなるチームとしては、昨夏の優勝校である一関学院と、昨年秋に苦戦した盛岡大付の名前が挙がる。一関学院は投手では寺尾皇汰（3年）、小野涼介（3年）、野手では原田大和（3年）、菅野千陽（3年）、小野唯斗（3年）と昨年夏の甲子園を経験したメンバーが多く残る。特に投手陣はあらゆるタイプが揃うだけに、花巻東打線も打ち崩すのは簡単ではないだろう。盛岡大付も春の県大会では２回戦で大船渡に敗れて早々に姿を消したが、伝統の強打は今年も健在。大型右腕の橋本旺太郎（３年）が調子を上げてくればかなり手強い相手となりそうだ。
  　前述したように夏は佐々木が勝負を避けられるシーンが増える可能性は高いが、仮にそうなったとしても、打撃以外でもチームを鼓舞する姿勢を見せ続けられるというのも彼の大きな魅力である。バッティングはもちろんだが、チームを牽引するリーダーシップをどこまで発揮できるかという点にもぜひ注目してもらいたい。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所（PABBlab）」でも多くの選手やデータを発信している。

【関連記事】ドラフト大注目・佐々木麟太郎の現在地。高校歴代最多「129HR」のスラッガーを球団スカウトはどう評価するのか

【関連記事】佐々木麟太郎はドラフトの目玉になり得るか？ 高校通算117本塁打に隠れた「不安要素」と「可能性」を見る