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高校野球

【高校野球】強豪校敗退の“波乱”が相次いだ中、なぜ仙台育英と広陵は前評判通りの実力を発揮できたのか?<SLUGGER>

西尾典文

2023.08.01

 同じことは広陵にも言える。投手陣は、センバツでは高尾響と倉重聡の2人に頼っていたが、ここに下級生の頃から経験のある岡山勇斗が復活し、加えて左腕の亀岡温斗、1年生の堀田昂佑が加わり、主戦2人への負担を軽減することができている。野手もドラフト上位候補である真鍋慧に注目が集まる中で、その前後を打つ選手が得点に絡むシーンが非常に多かった。

 2年生エースの高尾、主砲の真鍋という投打の太い柱となる選手がいながらも、この2人に頼り過ぎることなく、他の選手もしっかりレベルアップしてきたことが強さに繋がっている。広陵出身の選手は大学や社会人で成長するケースも多く、仙台育英と同様にチーム内の激しい競争がそれを生み出す要因の一つとも言えそうだ。

 もちろん、地方大会で敗れたチームも当然春から夏にかけて戦力の底上げには取り組んでいる。大阪桐蔭はエースの前田悠伍が春の大阪府大会、続く近畿大会で登板を回避する中、下級生の投手が成長を見せた。しかし打線はなかなか調子が上がらず、打撃重視のオーダーを組んだ結果、逆に守備の綻びが出て負けにつながっている。
 また、大阪桐蔭を破った履正社は正捕手の坂根葉矢斗が故障で先発出場できない中、他の選手がそれをカバーしており、大阪桐蔭以上にチーム力のアップに成功したとも言えるだろう。

 高校生の成長速度はプロとは比較にならないスピードであり、また逆にパフォーマンスが安定しないというのも確かである。その中でチームとして結果を残し続けるには中心選手の活躍はもちろんだが、常に他の選手がカバーできるような体制を構築する必要があり、それが今年上手くいったのが仙台育英、広陵、そして大阪桐蔭を破った履正社などではないだろうか。

 甲子園の本大会を勝ち上がるのにも同様のことが言えるだけに、地方大会からどれだけの上積みができるかという点にもぜひ注目してもらいたい。


文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

 

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