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高校野球

肥満気味の体型や故障癖、一線級投手への対応力...高校通算140本塁打を誇る佐々木麟太郎(花巻東)の“不安要素”を検証する<SLUGGER>

西尾典文

2023.08.07

 また、当時と比べても構えた時の身体の沈み込みが小さくなり、振り出しの鋭さは確実にアップしている。6月に愛知で行われた招待試合ではプロも注目するような投手と多く対戦したが、4試合で4本の場外ホームランを放っているのもプラス材料である。

 また、過去のスラッガーを見ても、清原和博(PL学園・元西武など)は渡辺智男(伊野商・元西武など)、松井秀喜(星稜・元巨人など)は上田佳範(松商学園・元日本ハムなど)、中田翔(大阪桐蔭・現巨人)は斎藤佑樹(早稲田実・元日本ハム)と植松優友(金光大阪・元ロッテ)、清宮幸太郎(早稲田実・現日本ハム)は桜井周斗(日大三・現DeNA)、村上宗隆(九州学院・現ヤクルト)は川端健斗(秀岳館)、田浦文丸(秀岳館・現ソフトバンク)と、高校時代はレベルの高い投手に抑え込まれている。

 基本的に、一発勝負の高校野球で対戦の少ない投手を打ち崩すのはどんな打者でも簡単ではなく、過去のスラッガーを見てもそれは同様なだけに、佐々木についても2年春のセンバツの結果だけを見て不安視する必要はないだろう。

 最後に、不安の声として大きいのは同じく高校通算本塁打数で話題となった清宮がプロで苦しんでいるということではないだろうか。同学年で外れ1位の村上が大活躍していることもあり、佐々木よりも真鍋慧(広陵)や明瀬諒介(鹿児島城西)など他のスラッガーを優先して指名すべきという声もある。しかし、清宮について改めて見ると、1年目でいきなり一軍で7本塁打を放っているように、決してプロで通用する力がなかったわけではない。
 
 今年は怪我もあって少し成績を落としているが、5年目の昨年は18本塁打を放っており、今後リーグを代表するスラッガーになっていくことも十分に期待できる位置にいる。清宮がプロ入り後数年間苦しんだだけで、佐々木も活躍できないというのはナンセンスな理屈であり、また清宮自身を活躍していない選手と決めつけるのも現在のプレーぶりを見れば誤りと言えるだろう。

 高校通算140本塁打という数字よりも、とにかくそのスウィングの迫力、ヘッドスピード、打球の勢いなどを見ればその実力が飛び抜けていることは明らかである。最後の夏の甲子園であらゆる雑音を封じ込めるようなバッティングを見せてくれることを期待したい。


文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

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