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高校野球

「黒木がどこで出てきても、打つことが勝利につながる」――相手の継投策を打ち破った仙台育英が2年連続の決勝へ【氏原英明が見た甲子園:第12日】<SLUGGER>

氏原英明

2023.08.22

 守備でリズムをつかんでいく野球で勝ち上がってきた神村学園からすれば、この猛攻には手立てがなく、万事休すといったところだった。

 さらに仙台育英は、今大会初めてエースの高橋煌稀を先発させた。準々決勝で大差がついたために登板がなく、休養十分で持てる力を存分に発揮した右腕は、5回を1失点にまとめ、これまで全試合登板の背番号「10」湯田統真にスウィッチした。

 湯田は点差を意識することなく全力で投げた。

「試合の後半は1点が重くなってくるし、相手への応援が高まってくるので、先発の時とは感覚は違うなと感じながら投げていました。1回1回マックスで投げようと思っていて、いい球がいったかなと思います」

 後ろに回った湯田はこれまで以上の出来だった。慎重な性格から、先発だと相手や点差を意識してしまうのかもしれない。これまでにはないほど最初から腕を振り、最高のピッチングを見せた。
 
 終わってみれば6対2の完勝で、2年連続の決勝進出を決めた。ただ、須江監督は「昨年とは異なると勝ち上がり方だ」と述べる。
 
「初戦から超強豪校と試合をさせていただいて、そろそろエネルギーがつきそうです」

 そして、決勝戦に向けて“異例のお願い”が飛び出した。

「ですから、東北6県の皆さん、宮城の皆さん、東北にゆかりのある皆さん。明後日(23日)の14時にパワーを送ってもらえたらと」

 決勝戦は、継投がカギになることは間違いない。

 この日、仙台育英が黒木を意識したように、相手の慶応は高橋と湯田をイメージして試合に臨んでくるだろう。どういう順番にするか。指揮官の選択が連覇を左右する。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『SLUGGER』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
 
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