もちろん、ライバルも黙っていない。
ブルワーズは、8月16日からの10試合で8勝2敗とカブス以上の成績を収め、2位カブスに4ゲーム差。ジャイアンツやレッズが一歩後退したかと思えば、フィリーズやダイヤモンドバックスが勝ち星を積み重ねる。試合の勝敗がこれほど如実に、ファンやメディアをバズらせる季節は他にない。
2本の二塁打で3打点を挙げ、チームの勝利に貢献した26日のパイレーツ戦後、他ならぬ鈴木自身がこう語っている。
「相手も粘り強くやってきているとは思うんで、そんなに簡単には勝てない。消化試合ではないので気は抜けないし、しんどいのはしんどいですよ。(中地区もワイルドカードも)全部、団子状態なんで、1回負けたら、すぐに順位が落ちてしまいますし、勝っても上が勝つんで、なかなか上へ上がれない状態が続いているから」
実は、8月のカブスはかなり“苦戦”している。
前述の通り、27日までに16勝8敗と大きく勝ち越したが、内容的には接戦になることが多く、1点差試合が9試合(6勝3敗)、2点差の試合6試合(3勝3敗)もある。
「ピッチャーは時期的にしんどい後半戦に入ってきてる。だんだん崩れてくるっていうのは仕方ないこと。結構、みんな、フル回転で投げているので、その分、今、好調な野手陣ができるだけ点を取って、楽に投げさせてあげればっていう感じだと思う。僕はそういう気持ちでやっている」
自分のバットでピッチャーを助けたい。それはいつだって変わらないが、ペナントレース終盤では意味合いが違う。鈴木がそんな気持ちを発露させたのは、26日のパイレーツ戦の後だった。5回、左中間へ三塁打を放った彼は、それが広島時代の2016年に自己最多の8三塁打を記録したのに次ぐシーズン4本目の三塁打だったにも関わらず、「嬉しいとかはないけど」とその重要性を説明した。 「1アウト、ノーアウトであれば、犠牲フライでも点になりますし、状況によっては内野が前進する可能性もある。そうなると次の打者がすごく気持ちが楽になるので、できるだけ塁は進めた方がいい」
個人ではなくチーム、いや、「点より線」と表現した方が正しいかも知れない。
言うまでもなく、打線で最もも重要なのは「つながり」である。カブスはこれまで、細かく打順を変えながらも、基本的には上位を打つマイク・トークマン、ニコ・ホーナー、ダンズビー・スワンソン、下位のヤン・ゴームズやキャンデラリオ、マドリガルらを、中軸を打つイアン・ハップやベリンジャー、そして鈴木がつないでビッグイニングを作ってきた。
そして、それができなければ、首位ブルワーズとの直接対決となった28日のように、ソロ本塁打2本で2点しか取れず、相手には3ラン本塁打を打たれるなどして2対6で完敗してしまう。それが、野球というものだ。
大谷がいつか言った、「ヒリヒリした」闘いは、そんな野球の醍醐味を味わう最高の瞬間の連続であり、選手たちにとっては最高の見せ場でもある。
「去年と違って、最後まで競って試合ができるのは幸せだと思いますし、そこを目指して皆、やっていると思うし、残り30試合ぐらいありますし、いろいろ勝ったり負けたりはあると思うんですけど、引き続き最後まで諦めずに戦って、最後は笑って終われたらなと思います」
4月や7月とはまったく違う空気感。
負けられない試合ばかりが続き、日毎、ライバルの動向が気になる季節。
メジャーリーグ王者決定戦に参加するための最低条件であるプレーオフ進出を巡る戦いは、ここからが本番であり、その中心にSeiya Suzuki=鈴木誠也がいるという幸福を、シカゴは味わっている真っ最中だ――。
文●ナガオ勝司
【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO
ブルワーズは、8月16日からの10試合で8勝2敗とカブス以上の成績を収め、2位カブスに4ゲーム差。ジャイアンツやレッズが一歩後退したかと思えば、フィリーズやダイヤモンドバックスが勝ち星を積み重ねる。試合の勝敗がこれほど如実に、ファンやメディアをバズらせる季節は他にない。
2本の二塁打で3打点を挙げ、チームの勝利に貢献した26日のパイレーツ戦後、他ならぬ鈴木自身がこう語っている。
「相手も粘り強くやってきているとは思うんで、そんなに簡単には勝てない。消化試合ではないので気は抜けないし、しんどいのはしんどいですよ。(中地区もワイルドカードも)全部、団子状態なんで、1回負けたら、すぐに順位が落ちてしまいますし、勝っても上が勝つんで、なかなか上へ上がれない状態が続いているから」
実は、8月のカブスはかなり“苦戦”している。
前述の通り、27日までに16勝8敗と大きく勝ち越したが、内容的には接戦になることが多く、1点差試合が9試合(6勝3敗)、2点差の試合6試合(3勝3敗)もある。
「ピッチャーは時期的にしんどい後半戦に入ってきてる。だんだん崩れてくるっていうのは仕方ないこと。結構、みんな、フル回転で投げているので、その分、今、好調な野手陣ができるだけ点を取って、楽に投げさせてあげればっていう感じだと思う。僕はそういう気持ちでやっている」
自分のバットでピッチャーを助けたい。それはいつだって変わらないが、ペナントレース終盤では意味合いが違う。鈴木がそんな気持ちを発露させたのは、26日のパイレーツ戦の後だった。5回、左中間へ三塁打を放った彼は、それが広島時代の2016年に自己最多の8三塁打を記録したのに次ぐシーズン4本目の三塁打だったにも関わらず、「嬉しいとかはないけど」とその重要性を説明した。 「1アウト、ノーアウトであれば、犠牲フライでも点になりますし、状況によっては内野が前進する可能性もある。そうなると次の打者がすごく気持ちが楽になるので、できるだけ塁は進めた方がいい」
個人ではなくチーム、いや、「点より線」と表現した方が正しいかも知れない。
言うまでもなく、打線で最もも重要なのは「つながり」である。カブスはこれまで、細かく打順を変えながらも、基本的には上位を打つマイク・トークマン、ニコ・ホーナー、ダンズビー・スワンソン、下位のヤン・ゴームズやキャンデラリオ、マドリガルらを、中軸を打つイアン・ハップやベリンジャー、そして鈴木がつないでビッグイニングを作ってきた。
そして、それができなければ、首位ブルワーズとの直接対決となった28日のように、ソロ本塁打2本で2点しか取れず、相手には3ラン本塁打を打たれるなどして2対6で完敗してしまう。それが、野球というものだ。
大谷がいつか言った、「ヒリヒリした」闘いは、そんな野球の醍醐味を味わう最高の瞬間の連続であり、選手たちにとっては最高の見せ場でもある。
「去年と違って、最後まで競って試合ができるのは幸せだと思いますし、そこを目指して皆、やっていると思うし、残り30試合ぐらいありますし、いろいろ勝ったり負けたりはあると思うんですけど、引き続き最後まで諦めずに戦って、最後は笑って終われたらなと思います」
4月や7月とはまったく違う空気感。
負けられない試合ばかりが続き、日毎、ライバルの動向が気になる季節。
メジャーリーグ王者決定戦に参加するための最低条件であるプレーオフ進出を巡る戦いは、ここからが本番であり、その中心にSeiya Suzuki=鈴木誠也がいるという幸福を、シカゴは味わっている真っ最中だ――。
文●ナガオ勝司
【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、
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