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大谷の右ヒジ靱帯損傷で改めて浮上するエンジェルスの“無策”ぶり。稀代の才能を浪費したオーナーの罪は大きい<SLUGGER>

久保田市郎(SLUGGER編集長)

2023.08.24

エンジェルスでの登板は今日が最後になってしまうかもしれない。(C)Getty Images

エンジェルスでの登板は今日が最後になってしまうかもしれない。(C)Getty Images

 大谷翔平(エンジェルス)が右ヒジ靱帯を損傷し、今シーズンはもう登板しないことが決まった。最悪、2度目のトミー・ジョン手術を強いられる可能性もある。二刀流選手として、文字通り“超人的”な活躍を続けてきた大谷だが、やはり身体は超人ではなく人間だった。

 投手、しかも本格派タイプとなれば肩やヒジの故障は付き物ではある。それでも、結果論と言われても、これまでのエンジェルスの運用に問題はなかっただろうか。

 エンジェルスは2021年以降、大谷の起用法に関しては基本的に本人に任せる方針を採ってきた。入団当初は登板前日と翌日は欠場させるなど、酷使を防ぐための管理を課していたエンジェルスだが、大谷自身の要望もあって21年からそうした「縛り」を撤廃。その途端、二刀流として完全開花したのは周知のとおりで、『ニューヨーク・タイムズ』紙はその姿を「Unleashed(解き放たれた)」と表現した。

 だが、今回に限ってはその「放任主義」が結果的に大きな災いをもたらしたと言う他ない。WBCからフル回転し、その勢いのままシーズンに突入。だが、打撃はともかく投球に関しては5月から山あり谷ありだった。春先は絶対的な威力を発揮していたスイーパーで5月以降多くの本塁打を浴び、与四球率も大幅に悪化。その他にもマメをつぶしたり、けいれんを起こしたりと、万全な状態ではないことは誰の目にも明らかだった。
 
 それでも、先発登板をスキップする程度で大谷は試合に出場し続けた。もちろん、大谷自身がポストシーズンに出場したいという強い思いを持っていたのが最大の理由だろう。一方でエンジェルスも、妙な言い回しになるが、今季終了後にFAとなる大谷を引き留めるために大谷をフル回転させる必要があった。ポストシーズンに出場し、近い将来は世界一も狙える力があると証明することが、大谷と再契約にこぎつけるための絶対条件だったからだ。

 パトリック・サンドバルら他の先発投手たちが軒並み不振、野手陣ではマイク・トラウトを筆頭に怪我人が相次ぐ中、投打両面で大谷に負担が集中することになった。7月までワイルドカード争いに何とかしがみつき、積極的な途中補強も展開したエンジェルスだが8月以降は力尽き、そしてポストシーズン出場が絶望的な状況になったとほぼ同時に大谷の右ヒジが悲鳴を上げた。

 仮定の話をしても仕方がないのは分かっている。繰り返しになるが、本格派投手は肩やヒジの故障と常に隣り合わせであることも事実だ。だが、もしチームの戦力がもっと充実していたら、故障を未然に防止することもできたのではないか。
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