その後、順調に勝ち星を伸ばしていった種市だが、当初は100球を目処に降板することが多かった。吉井コーチの言葉を借りると、今時の投手には珍しく「投げたいビーム」を出してくるのだという。
「あの子は引くところがないんですよね。いつも攻める気持ちを持っている子です」
それまでは「次にしておけよ」と、なだめ続けてきた吉井コーチ。しかし、6月13日のDeNA戦。3-1で迎えた6回、二死満塁のピンチを無失点で切り抜け、ベンチに戻ってきた種市に今季初めて、続投を促した。
「100球超えていたので、6回で終わるかなと思っていたんですが『もう1回行こう』と言われました。7回は行きたいと思っていたので、球数が多かったですが、行けてよかったです」(種市)
吉井コーチに背中を押された種市は7回、2番から始まる好打順で150キロ超えを連発。宮崎、筒香から二者連続三振を奪うなど、7回を三者凡退で締めて見せた。
「6回にギアを上げてギリギリのところで抑えて、その後の7回でも普通に集中力を切らすことなく投げ切られたのは、すごくよかった」(吉井コーチ)
7回を投げ終えた投球数は123球。吉井コーチによると、この120球超えの続投には根拠があったという。
「80球くらいで球速が落ちてきていたものが、この日は100球を超えてもしっかり投げられていた。選手の身体が大事なので、故障しそうなくらい疲れていたら、やめようと思ったんですが、そんな様子もなく『全然大丈夫です!』と本人の言葉でもあったので」
コーチ陣は選手の状態や成長度合いを図りながら、さらなる成長を信じて課題を投げかけていく。それによって多くの経験を積んでいく若い投手陣。そうした環境が、種市の大きな飛躍へと繋がっていった。
「吉井さんの期待に応えられるよう全力でいきました。ここで抑えなければ次回、100球ちょっとで代えられてしまう。この日の球数は、今後投げていけるという自信にもなります」。そう総括した6月13日の登板は、間違いなく種市にとって節目になった。
7月5日に細菌性大腸炎で離脱したものの、7月21日の日本ハム戦で復帰。その後大きな故障もなく最後までローテーションを守りきり、今季8勝(2敗)とチーム最多の勝ち星を挙げるとともに、目標としていた100回をクリアする、シーズン116回2/3イニング登板を果たした。今オフにはアメリカ・シアトルにあるトレーニング施設「ドライブライン・ベースボール」に派遣され、様々な指導を受けた。来季から背番号「16」を背負うなど周囲の期待も大きい。
今季、最優秀防御率賞を獲得した山本由伸(オリックス)を筆頭に、今井達也(西武)、堀瑞輝(日本ハム)、寺島成輝(ヤクルト)、藤平尚真(楽天)など、好投手揃いの高卒3年目世代。その中でも、大きな可能性を秘めた右腕が、今後どんな進化を見せてくれるのか、楽しみでならない。
文●岩国誠
【著者プロフィール】
いわくに・まこと/1973年生まれ。元々はプロ野球のニュース番組制作に携わるTV映像ディレクター。8年前から5年間、SNSなどでの球団公式映像やパ・リーグTVでの制作・配信を経験。その縁から昨年より、フリーライターとして、webメディアでのプロ野球記事の執筆を始める。また、舞台俳優としての経験を生かして、野球イベントなどの運営や進行役など、幅広い活動を行っている。
「あの子は引くところがないんですよね。いつも攻める気持ちを持っている子です」
それまでは「次にしておけよ」と、なだめ続けてきた吉井コーチ。しかし、6月13日のDeNA戦。3-1で迎えた6回、二死満塁のピンチを無失点で切り抜け、ベンチに戻ってきた種市に今季初めて、続投を促した。
「100球超えていたので、6回で終わるかなと思っていたんですが『もう1回行こう』と言われました。7回は行きたいと思っていたので、球数が多かったですが、行けてよかったです」(種市)
吉井コーチに背中を押された種市は7回、2番から始まる好打順で150キロ超えを連発。宮崎、筒香から二者連続三振を奪うなど、7回を三者凡退で締めて見せた。
「6回にギアを上げてギリギリのところで抑えて、その後の7回でも普通に集中力を切らすことなく投げ切られたのは、すごくよかった」(吉井コーチ)
7回を投げ終えた投球数は123球。吉井コーチによると、この120球超えの続投には根拠があったという。
「80球くらいで球速が落ちてきていたものが、この日は100球を超えてもしっかり投げられていた。選手の身体が大事なので、故障しそうなくらい疲れていたら、やめようと思ったんですが、そんな様子もなく『全然大丈夫です!』と本人の言葉でもあったので」
コーチ陣は選手の状態や成長度合いを図りながら、さらなる成長を信じて課題を投げかけていく。それによって多くの経験を積んでいく若い投手陣。そうした環境が、種市の大きな飛躍へと繋がっていった。
「吉井さんの期待に応えられるよう全力でいきました。ここで抑えなければ次回、100球ちょっとで代えられてしまう。この日の球数は、今後投げていけるという自信にもなります」。そう総括した6月13日の登板は、間違いなく種市にとって節目になった。
7月5日に細菌性大腸炎で離脱したものの、7月21日の日本ハム戦で復帰。その後大きな故障もなく最後までローテーションを守りきり、今季8勝(2敗)とチーム最多の勝ち星を挙げるとともに、目標としていた100回をクリアする、シーズン116回2/3イニング登板を果たした。今オフにはアメリカ・シアトルにあるトレーニング施設「ドライブライン・ベースボール」に派遣され、様々な指導を受けた。来季から背番号「16」を背負うなど周囲の期待も大きい。
今季、最優秀防御率賞を獲得した山本由伸(オリックス)を筆頭に、今井達也(西武)、堀瑞輝(日本ハム)、寺島成輝(ヤクルト)、藤平尚真(楽天)など、好投手揃いの高卒3年目世代。その中でも、大きな可能性を秘めた右腕が、今後どんな進化を見せてくれるのか、楽しみでならない。
文●岩国誠
【著者プロフィール】
いわくに・まこと/1973年生まれ。元々はプロ野球のニュース番組制作に携わるTV映像ディレクター。8年前から5年間、SNSなどでの球団公式映像やパ・リーグTVでの制作・配信を経験。その縁から昨年より、フリーライターとして、webメディアでのプロ野球記事の執筆を始める。また、舞台俳優としての経験を生かして、野球イベントなどの運営や進行役など、幅広い活動を行っている。