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プロ野球

佐藤、伊藤、村上、中野、石井...阪神38年ぶりの日本一を支えた20年ドラフト組の活躍。成功の要因は「長所を見抜く力」<SLUGGER>

西尾典文

2023.11.14

 5位の村上も、智弁学園高時代はエースとしてセンバツ優勝、東洋大でも早くから投手陣の一角に定着していたが、伊藤と同じく凄みがある投手ではなかった。また4年秋のシーズンに右前腕を負傷したことで評価を下げたという側面もある。プロでも最初の2年間はほぼファーム暮らしだったことを考えると、入団後の成長が大きかったことは確かだが、高い制球力は大学時代から大きな武器であり、その土台があったことが今年のブレイクにつながったことも間違いない。阪神は今年のドラフトでもコントロールの良い投手を多く指名したが、その背景には村上の活躍が影響していることは間違いないだろう。

 野手で低評価を覆す活躍を見せているのが6位で入団した中野だ。ここまで順位が低くなった理由としては、希少性の低さが考えられる。右投左打の内野手で、守備力も脚力も高いというタイプは社会人では決して珍しくない、それでも中野がプロで活躍できているのは、やはり打撃の面が大きい。小柄で足が速くても、決して当てにいくようなスウィングをすることなく、積極的に強く振れるスタイルと、スウィングの強さを阪神のスカウト陣が見抜いたと言えるだろう。

 8位指名の石井は独立リーグでは圧倒的なピッチングを見せていたが、プレーしていた四国アイランドリーグは極端な“投高打低”であり、その点がマイナスに働いてここまで低い順位になったと考えられる。ただ、当時から150キロ前後のストレートと鋭く落ちるシンカーのコンビネーションは一級品、仮に社会人でプレーしていればもっと高い評価になった可能性も高い。それを見逃すことなく、しっかり支配下の最下位で獲得できた阪神のスカウト陣の勝利と言える。
 こうして見ると伊藤は試合を作る能力、村上はコントロール、中野はパンチ力と長所にしっかり目を向けており、また石井は独立リーグだからといって低く評価することがなかった点が成功の要因と言えそうだ。今年のドラフトでも、2位で四国アイランドリーグの椎葉剛(徳島インディゴソックス)を指名しており、成功の流れは続いているように見える。

 03年、05年のリーグ優勝は他球団から移籍してきた選手が目立ったが、現在のチームは生え抜き選手の活躍なしには語ることはできない。現行のスカウティングを継続することができれば、黄金時代到来も十分に期待できるだろう。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

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