▼村上頌樹
<プラス面>プロ最初の2年は大半が二軍暮らしだったが、3年目の今季は防御率1.75でタイトル獲得と一気に飛躍。137三振を奪いながら四球は15個しか与えず、K/BBは9.13と極めて高いレベルだった。
<マイナス面>巨人・ヤクルト・中日のBクラス3球団相手に7勝2敗、防御率1.22。AクラスDeNA・広島には2勝2敗、2.33で、良い数字ではあるけれども、弱いチーム相手に稼いだ面はあった。
▼岩崎優
<プラス面>シーズン途中から抑えに回り、35セーブでタイトルを獲得。本来抑えの予定だった湯浅京己の離脱というピンチを救った功績は大きい。
<マイナス面>投球回数は56イニングで、村上の半数以下。それでいて防御率1.77は村上よりもわずかながら悪い。
こうしたさまざまな要素を検討すると、まず中野、佐藤は近本、大山を下回るのは否めない。そして岩崎も、抑えとしてプレッシャーのかかる場面で投げていた点を考慮しても、村上との90イニング近い“仕事量”の差は埋め難いので、この3人は候補から外れる。
では、近本と大山の比較はどうか。控えレベル選手と比べてどれだけ勝利に貢献したかを示す総合指標WARを参考にすると、データスタジアム版は大山が6.41、近本が6.38とほぼ同じ。DELTA社の数値では近本が7.2で1位、大山は6.5で3位だった。
けれども、すでに述べたように近本は不調の時期があったのに対し、大山は1年を通じてずっと安定していた。また、大山のマイナス面として失策の多さを挙げたが、DELTA社によるUZAのデータだと11.3という素晴らしい数字(近本は外野手でリーグトップの9.5)で、実際には決してマイナスではなかった。両者にはほとんど差がないけれども、大山の方がわずかに貢献度は高かったと見る。
だが、村上のプラス要素は大山よりもさらに多い。DeNA・広島に多少弱かったというのも重箱の隅を突くようなものだし、甲子園で防御率1.49、その他の球場では1.88と、投手に有利な本拠地だけで好投していたわけでもない。
何より、21度の先発で6イニングを投げきれなかったのは2試合のみ(うち1試合は優勝決定後)、4失点以上も2試合という安定感は並外れており、10勝どまりでも実質的に16~17勝の価値はあった。大山や近本が選ばれても全然不思議はないけれども、MVPは村上が受賞するのが最も納得がいく。
文●出野哲也
【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『メジャー・リーグ球団史』『プロ野球ドラフト総検証1965-』(いずれも言視舎)。
佐藤、伊藤、村上、中野、石井...阪神38年ぶりの日本一を支えた20年ドラフト組の活躍。成功の要因は「長所を見抜く力」<SLUGGER>
虎の元助っ人が虎党の驚愕行動を「正気の沙汰じゃない」と激白! 甲子園球場を愛ある“イジり”「ひどいグラウンドだった」
<プラス面>プロ最初の2年は大半が二軍暮らしだったが、3年目の今季は防御率1.75でタイトル獲得と一気に飛躍。137三振を奪いながら四球は15個しか与えず、K/BBは9.13と極めて高いレベルだった。
<マイナス面>巨人・ヤクルト・中日のBクラス3球団相手に7勝2敗、防御率1.22。AクラスDeNA・広島には2勝2敗、2.33で、良い数字ではあるけれども、弱いチーム相手に稼いだ面はあった。
▼岩崎優
<プラス面>シーズン途中から抑えに回り、35セーブでタイトルを獲得。本来抑えの予定だった湯浅京己の離脱というピンチを救った功績は大きい。
<マイナス面>投球回数は56イニングで、村上の半数以下。それでいて防御率1.77は村上よりもわずかながら悪い。
こうしたさまざまな要素を検討すると、まず中野、佐藤は近本、大山を下回るのは否めない。そして岩崎も、抑えとしてプレッシャーのかかる場面で投げていた点を考慮しても、村上との90イニング近い“仕事量”の差は埋め難いので、この3人は候補から外れる。
では、近本と大山の比較はどうか。控えレベル選手と比べてどれだけ勝利に貢献したかを示す総合指標WARを参考にすると、データスタジアム版は大山が6.41、近本が6.38とほぼ同じ。DELTA社の数値では近本が7.2で1位、大山は6.5で3位だった。
けれども、すでに述べたように近本は不調の時期があったのに対し、大山は1年を通じてずっと安定していた。また、大山のマイナス面として失策の多さを挙げたが、DELTA社によるUZAのデータだと11.3という素晴らしい数字(近本は外野手でリーグトップの9.5)で、実際には決してマイナスではなかった。両者にはほとんど差がないけれども、大山の方がわずかに貢献度は高かったと見る。
だが、村上のプラス要素は大山よりもさらに多い。DeNA・広島に多少弱かったというのも重箱の隅を突くようなものだし、甲子園で防御率1.49、その他の球場では1.88と、投手に有利な本拠地だけで好投していたわけでもない。
何より、21度の先発で6イニングを投げきれなかったのは2試合のみ(うち1試合は優勝決定後)、4失点以上も2試合という安定感は並外れており、10勝どまりでも実質的に16~17勝の価値はあった。大山や近本が選ばれても全然不思議はないけれども、MVPは村上が受賞するのが最も納得がいく。
文●出野哲也
【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『メジャー・リーグ球団史』『プロ野球ドラフト総検証1965-』(いずれも言視舎)。
佐藤、伊藤、村上、中野、石井...阪神38年ぶりの日本一を支えた20年ドラフト組の活躍。成功の要因は「長所を見抜く力」<SLUGGER>
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