専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
MLB

カブスはどこまで本気だったのか?ウィンター・ミーティングの現場から見た“大谷争奪戦狂騒曲”の顛末<SLUGGER>

ナガオ勝司

2023.12.12

 番記者の多くはそれが分かっているので、地元テレビの退却後、より突っ込んだ質問をすることになるのだが、そういった状況下では「大物選手の移籍がまだ決まらないと、プランA、プランB、プランCと補強の形を想定するのも難しくなるのか?」とか、「市場に出ている選手たちの価値に大きな幅はあるが、どのように補強予算を考えているのか?」といった具合に、とても曖昧な質問になる。

 だから、その答えも「まだ初期段階なので市場が動いていないし、明確なプランはあっても手探りの状態だ」とか、「今年だけではなく、年俸総額の見極めは毎年、大事なことであり、補強予算は自ずと決まってくるものだ」と、想定内の答えに終始した。「ところでオフレコ話になりますが、大谷は実際どうなの?」などというカジュアルな質問をされても、「オフレコ話になりますが、分かりません」などと冗談を返されるだけだった。

 ホーキンスGMの上司であるホイヤー編成総責任者は、家族の事情でWM初日を欠席したものの、ドジャースのロバーツ監督が「翔平と会った」と発言した3日目の午後、他球団の編成トップとともに会見場に姿を現した。

 当然、日米両方の記者から大谷関連の質問を投げかけられたが、ホーキンスGM同様、「それが話題になる理由は理解しているが、何も話せることはないし、話さない」ときっぱり言った。

 実はホイヤー編成総責任者も「番記者のみ」の囲み取材を行った。そこにも潜り込ませていただいたが、一貫して彼は「特定の選手についての質問には答えられないんだ」と徹底していた。それはこちらも了解しているので、「オオタニ」の「オ」の字も出さなかった。
 半ばオフレコ取材だったが、一緒に参加した全米野球協会シカゴ支部局長のミーガン・モンテムロ氏(『シカゴ・トリビューン』紙)は早くから、「カブスにも大谷を獲得する意思はあるけれど、8年から10年と言われている長期契約の締結はチーム方針と相反する」と言っていた。

 カブスの現有戦力で最も長い長期契約は昨オフ、ダンズビー・スワンソン遊撃手と結んだ7年1億7700万ドルであり、以下、鈴木誠也外野手の5年8500万ドル、ジェイムソン・タイオンの4年6800万ドルと続く。大谷との交渉が実際にあったかどうかは定かではないし、今となってはどうでもいいことだが、カブスにとっては、最長でも8年5億6000万ドル程度が限界だったと思われる。

 ホイヤー編成総責任者は、2016年にカブスを108年ぶりのワールドシリーズ優勝に導いた前任者セオ・エプスタイン氏の手法を引き継いでいて、大谷と同じく新人王とMVPの両方を獲得したことで知られる生え抜きのクリス・ブライアント三塁手/外野手との長期契約を見送った責任者だ。FAイヤーの21年途中にジャイアンツへトレードされたブライアントは、その年のオフにロッキーズと7年総額1億8200万ドルで契約しているが、カブスはそんな長期のコミットメントは有り得ないことだった(ブライアント同様、16年のワールドシリーズ優勝メンバーのハビア・バイエズ遊撃手は。同じく21年途中に放出された後にタイガースと6年総額1億4000万ドルで契約している)。
 
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号