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MLB

カブスはどこまで本気だったのか?ウィンター・ミーティングの現場から見た“大谷争奪戦狂騒曲”の顛末<SLUGGER>

ナガオ勝司

2023.12.12

 カブスは18年のキャンプ直前にダルビッシュ有投手と6年1億2600万ドルで契約したが、ブライアントやバイエズ、あるいはアンソニー・リゾ一塁手(現ヤンキース)やカイル・シュワバー外野手(現フィリーズ)らを主力とした当時のチームが機能しないと分かるや否や、契約3年目の20年オフにパドレスに放出している。

 今のチームはポスト・パンデミックで再建中のチームであり、その柱に前出のスワンソンや鈴木、そして大谷を据えるのは有り得ない話ではなかったが、「10年契約」をオファーすることはハナから考えてなかったではないかと思う。

 なぜなら、大谷の契約が総額5億ドル、いや6億ドルだと言われていたのは、彼が投手と打者の両方でインパクトのある選手であり続けることを前提としているからだ。具体的には、投手として毎年10勝以上、打者として40本塁打以上をクリアする選手としての価値である。もしも、彼が次の10年間にもう一度手術を要するような怪我をして、たとえば35歳で打者に専念することになったとしても、年間数千万ドルとも言われているマーケティング効果は別の話として、選手として年俸4000万ドル前後の価値があるのかどうか。
 前出のモンテムロ氏の発言は、そのリスクを承知していなければ大谷と長期契約はできないし、カブスにはそのリスクを背負う気はないだろう、という予測の上で出てきたことだ。大部分が後払いとなる総額7億ドルよりも、10年という長期間を保証することが出来なかったのだろう。

 そもそも、地元記者との雑談の中で最も話題になったのは「懸案事項の先発投手、一塁手、三塁手をどう補強するのか?」である。総額2億ドル以上かかると言われている山本由伸ですら、彼らの間ではあまり話題になっておらず、特定の記者の先走り報道に過ぎない。

 厳かとも言えるほど密やかに発表されたドジャースの大谷獲得劇。これから入団会見、キャンプ初日、オープン戦、韓国での開幕戦と続く中、「大谷狂騒曲」が鳴り響くのはむしろこれからかもしれない。

文●ナガオ勝司

【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO

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