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プロ野球

涌井放出は至極納得。スカウト上がりの球団本部長が仕掛けたロッテ浮上への周到な一手

氏原英明

2019.12.22

 松本のスカウティングは大成功だった。当時はスカウトでも若い方だったから、「あの年齢だから西岡を1位指名する勇気が持てる」など、他球団のスカウトからやっかみも聞こえたが、大英断ができる能力は彼の真骨頂と言っても良かった。

 そして、この19年オフは、涌井のトレードにとどまらず、F Aで獲得した福田秀平や、鈴木大地(楽天にFA移籍)の人的補償で獲った小野郁について、スカウティング時代まで遡って獲得の決断をしたと証言している。そうした言葉からも分かるように、現状だけを見るのではなく、過去にもフォーカスしているあたりは、スカウト畑出身の特徴が如実に出ていると言えるだろう。

 09年にも、「菊池雄星」世代が脚光を浴びる中、トヨタ自動車の荻野貴司を単独1位指名した。荻野が奈良県の郡山高でプレーしていた時、私は松本の姿を現場でよく見かけた。全国的にはそれほど有名ではなかった荻野の獲得を当時から本気で狙っていたようで、大学・社会人を経てようやく指名にこぎつけたのである。
 
 改めて涌井移籍のニュースは衝撃的だったが、かつてロッテを大きく変えた男の仕業だったと考えると、納得させられるものがある。 

 3年ほど前、ある媒体でスカウト特集を組んだ時、松本氏を企画の中に組み入れて、取材のオファーを頼んでもらったことがある。実現はしなかったのだが、松本氏にそのことを伝えると「えー、ほんとですか? 僕のところまでは(話は)こなかったですね。取材ならいつでも受けますよ。今度からは直接、連絡してもらっていいですよ」と言ってもらえた。

 改めて、取材申請を出してみたいと思う。
 今回の決断が、近いうちに実を結ぶ気がしてならないからだ。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
 

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