2番、鈴木誠也が打席に立つ。スキーンズは初球、やや外寄りに95.9マイルのスプリットを投げた(ストライク)。見た目には「なんか今の速球、ちょっと動いたよね?」ぐらいの感じである。2球目は時速87マイルのスライダー(ストライク)。内寄りでジャイロのような変化の球だ。そして最後の一球は、少しスピードを殺した時速84.2マイルのスライダーで、精度はともかく、外角低めに決まって鈴木は空振り三振に倒れた。
2度目の対決は3回だった。先頭打者として打席に立った鈴木の初球、スキーンズは再び、時速95マイル近いスプリットを投げた(ストライク)。2球目はスライダー。これもジャイロのような小さな変化で内寄りに決まる。そして最後は外角低めへの99.2マイルの速球だ。打者にとっては文字通り「手も足も出ない」見逃し三振である。
試合後、鈴木はこう言っている。
「あんなに速い球を見たのは久しぶりだった」
その言葉に少し補えることがあるとすれば、鈴木は4月14日のマリナーズ戦で患部を傷めて以来、5月6日にライブBPを行うまで、投手の生きた球を打つことがなかった。さらに7日がアイオワへの移動日で、8日、9日と2試合連続で試合に出場したものの、対戦相手の投手は最速93マイルで、それはスキーンズのスプリットよりも遅かった。
3度目の対決は5回無死二塁という場面だった。鈴木は初球のハーフスウィングの際に脇腹を気にする仕草を見せてヒヤッとさせたものの、4球目のスプリットをなんとかファウルにし、5球目のスライダーに食らいついて遊撃への内野安打にした。打球が弱かろうがなんだろうが、ヒットはヒットである。
「(打撃の調子は)良くはないし、たまたまヒットになっただけ」とは言うものの、スキーンズの速球を見たことで目が慣れたのか、7回には左腕アルロディス・チャップマンの95マイルの速球を初速107.3マイルの打球で軽々と弾き返した。 大事なのは、スキーンズが鈴木への一球を最後に5回途中84球で6安打3失点、7奪三振2四球で降板したという事実だ。
あろうことか、ここから試合が大きく動いた。
鈴木の内野安打でチャンスを広げたカブスは2死後、スキーンズの後を受けてマウンドに上ったカイル・ニコラスの5連続四死球の大乱調などで一気に追いついた。
スキーンズが投げている時には「おおーっ」とか、「うおーっ」と叫んでいた地元の観客はブーイングに転じ、2死満塁で再び鈴木に打席がまわったところで大雨が降り出すと、「やってられっかよ」とばかりに多くが球場を後にした。
試合が再開されたのは2時間20分後。試合後、「(中断の後に)先頭打者になったってことは今までなかった」と言った鈴木と、続くベリンジャーが連続で押し出し四球を選んでカブスが2点を勝ち越した。
ところが、だ。今年のカブスの弱点である救援投手陣がこの日も崩壊し、その裏、ヤズマニ・グランデルの3点本塁打で再逆転に成功したパイレーツが10対8で勝利を収めたのである。
カブスのカウンセル監督は試合後、「まあ、よくある試合ではないことだけは確かだ」とため息をついたが、それは球場に詰めかけたファンにとっても、超有望株のデビュー戦を取材したメディアにとっても同じである。
中断時間を含めれば計5時間16分もの長い、長い試合。
地元ラジオ局によると、スキーンズを応援していた3万4千人余の観客は、試合終了時には推定数千人ほどしか残っていなかったという。
文●ナガオ勝司
【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO
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2度目の対決は3回だった。先頭打者として打席に立った鈴木の初球、スキーンズは再び、時速95マイル近いスプリットを投げた(ストライク)。2球目はスライダー。これもジャイロのような小さな変化で内寄りに決まる。そして最後は外角低めへの99.2マイルの速球だ。打者にとっては文字通り「手も足も出ない」見逃し三振である。
試合後、鈴木はこう言っている。
「あんなに速い球を見たのは久しぶりだった」
その言葉に少し補えることがあるとすれば、鈴木は4月14日のマリナーズ戦で患部を傷めて以来、5月6日にライブBPを行うまで、投手の生きた球を打つことがなかった。さらに7日がアイオワへの移動日で、8日、9日と2試合連続で試合に出場したものの、対戦相手の投手は最速93マイルで、それはスキーンズのスプリットよりも遅かった。
3度目の対決は5回無死二塁という場面だった。鈴木は初球のハーフスウィングの際に脇腹を気にする仕草を見せてヒヤッとさせたものの、4球目のスプリットをなんとかファウルにし、5球目のスライダーに食らいついて遊撃への内野安打にした。打球が弱かろうがなんだろうが、ヒットはヒットである。
「(打撃の調子は)良くはないし、たまたまヒットになっただけ」とは言うものの、スキーンズの速球を見たことで目が慣れたのか、7回には左腕アルロディス・チャップマンの95マイルの速球を初速107.3マイルの打球で軽々と弾き返した。 大事なのは、スキーンズが鈴木への一球を最後に5回途中84球で6安打3失点、7奪三振2四球で降板したという事実だ。
あろうことか、ここから試合が大きく動いた。
鈴木の内野安打でチャンスを広げたカブスは2死後、スキーンズの後を受けてマウンドに上ったカイル・ニコラスの5連続四死球の大乱調などで一気に追いついた。
スキーンズが投げている時には「おおーっ」とか、「うおーっ」と叫んでいた地元の観客はブーイングに転じ、2死満塁で再び鈴木に打席がまわったところで大雨が降り出すと、「やってられっかよ」とばかりに多くが球場を後にした。
試合が再開されたのは2時間20分後。試合後、「(中断の後に)先頭打者になったってことは今までなかった」と言った鈴木と、続くベリンジャーが連続で押し出し四球を選んでカブスが2点を勝ち越した。
ところが、だ。今年のカブスの弱点である救援投手陣がこの日も崩壊し、その裏、ヤズマニ・グランデルの3点本塁打で再逆転に成功したパイレーツが10対8で勝利を収めたのである。
カブスのカウンセル監督は試合後、「まあ、よくある試合ではないことだけは確かだ」とため息をついたが、それは球場に詰めかけたファンにとっても、超有望株のデビュー戦を取材したメディアにとっても同じである。
中断時間を含めれば計5時間16分もの長い、長い試合。
地元ラジオ局によると、スキーンズを応援していた3万4千人余の観客は、試合終了時には推定数千人ほどしか残っていなかったという。
文●ナガオ勝司
【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、
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