専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
プロ野球

筒香の後継者は誰だ?屈辱を脳裏に焼き付けた若武者・伊藤裕季也も候補のひとりに

石塚隆

2020.01.07

 チームが待ち望んでいた大型内野手の誕生ではあるが、春先はファームで苦しんでいた。スウィングが安定せず、力感に欠けてしまうことがあった。しかし、嶋村一輝打撃コーチからのアドバイスにより練習の取り組み方を変え、徐々にファームで結果を出すようになっていった。

 嶋村コーチから言われた言葉で特に印象に残ったのが「一軍レベルのピッチャーのストレートを打ち返せないと生き残れない」だったという。この言葉を胸に、伊藤は準備を重ねた。それが衝撃的なデビュー弾として実を結んだのだ。

 ただ、ラミレス監督は伊藤を評価する一方で、課題も口にしていた。

「速いボールにも対応できる力は持っている。しかし、結果を出せば相手チームも分析してくる。そこにどう対応するかが大切」

 案の定、滑り出しは良かったが徐々に快音は少なくなっていった。プロ1年目は最終的に21試合に出場し、57打席で打率.288、4本塁打で終えている。ただ、特筆すべきはスラッガーとしてのポテンシャルである。打席数が少ないので参考程度にしかならないが、OPSは.929と、ソト(.902)や筒香嘉智(.899)らを上回る数字を残している。
 
 佐野、細川成也、楠本泰史ら長打力が魅力の若手の一人として、将来的に筒香の穴を埋める存在になれる可能性を持った選手であることは間違ない。

 シーズン終了後、伊藤は11月から開催された台湾ウィンター・リーグに参加した。帯同していた巨人の村田修一バッティングコーチらにアドバイスをもらい、新しいフォームを模索してきたという。果たしてこれが功を奏するのか楽しみにしたい。

 守備においては、現在レギュラーの決まっていないセカンドを狙うことになるが、まだまだフィールディングやテンポに改善の余地が多く、さらなる成長を期待したい。ファームではサードを守る機会も多く、今年32歳になる宮﨑が有事の際には、しっかりとバックアップできる状態を作っておくべきだろう。

 伊藤自身、「少ないチャンスをいかに生かすか」と語っているように、2020年シーズンはレギュラー争いが一層激しくなる。目の前で優勝胴上げを見た悔しさを胸に秘め、ぜひ、パワーあふれる魅力的な長打力を爆発させてほしい。

文●石塚隆(フリーランスライター)

【著者プロフィール】
いしづか・たかし/1972年、神奈川県生まれ。プロ野球などスポーツを中心に、社会、サブカルチャーなど多ジャンルにわたり執筆するフリーランスライター。『Number』をはじめ『週刊プレイボーイ』『web Sportiva』『ベースボールチャンネル』などに寄稿。現在『Number Web』にて横浜DeNAベイスターズに関するコラム『ハマ街ダイアリー』を連載中。
 

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号