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プロ野球

中野、宗、長岡のゴールデン・グラブ受賞3人がいずれも新型指標UZRで大幅低迷。“守備の名手”に何が起きているのか<SLUGGER>

DELTA

2024.06.22

 低迷の理由も、中野と同じく守備範囲の狭さにある。表を見ると高いUZRを記録した21年、宗の守備で優れていたのは三遊間の打球処理だった。この年の三遊間の守備範囲評価は10.5点。平均的な三塁手が守っていた場合に比べ、三遊間だけでチームの失点を10.5点も減らしていたという計算である。これはかなりインパクトのある数字だ。

◎宗の打球方向別守備範囲評価(三塁)
年度    三塁線    定位置周辺    三遊間
2021    -1.0    1.2    10.5
2022    -4.3    0.6    1.6
2023    -0.7    0.6    -3.5
2024    -0.7    -0.3    -3.8

 ただ、近年の宗はこの三遊間の打球処理が年々悪化の一途を辿っている。2021年に10.5だったのが22年は1.6、23年は-3.5、そして今季はまだシーズン半分にも満たないにもかかわらず、-3.8と自己ワーストを更新してしまっている。代わりに三塁線に強くなっているというわけでもない。アクロバティックな守備のイメージのある宗だが、こうして見ると機動力のない三塁手になってきているようにも見える。

 最後に取り上げるのは長岡秀樹(ヤクルト)だ。レギュラー2年目の昨季は全遊撃2位となるUZR8.5を記録。中野や宗と違い、データで見ても上位の守備評価を得て、球団史上最年少でゴールデン・グラブに輝いた。だが、今季はここまでUZR-7.1で、昨季とは逆に全遊撃手中ワーストの守備貢献に沈んでいる。

 この状況を生んだのもまた守備範囲の課題だ。昨季までの長岡は定位置や三遊間の打球処理で大きく失点を減らす一方、二遊間の打球は苦手としていた。昨季は三遊間の打球処理で5.5点失点を減らした一方、二遊間で5.6点失点を増やしていた。三遊間寄りに得意な打球が偏っている、珍しい遊撃手だ。 
◎長岡の打球方向別守備範囲評価(遊撃)
年度    三遊間    定位置周辺    二遊間
2022    4.4    4.0    -1.3
2023    5.5    3.6    -5.6
2024    1.0    0.7    -8.2

 今季もこの傾向は変わらないのだが、二遊間の損失は例年以上に大きくなっている。シーズンの半分も終わっていない時点で-8.2。二遊間を抜けてセンターに抜ける打球が例年以上に多くなっているようだ。例年に比べると中野同様、長岡についてもコンディションに問題があるのかもしれない。

 それだけではない。昨季はシーズンを通して8失策、守備率は3位(500イニング以上)の.986と堅守も売りにしていた。だが、今季はすでに6失策。エラーの内訳を見ると、捕球ミスがすでに昨季と同じ4つ。二遊間の打球処理だけでなく、イージーな捕球ミスを減らせるかも、長岡がUZRを回復させられるかの重要なファクターになる。

※データは6月16日終了時点

文●DELTA

【著者プロフィール】
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』の運営、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。

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