そしてもう一つ、田宮にとって大きいのがドラフト2位ルーキーの進藤勇也の加入ではないだろうか。進藤は3年時から大学日本代表に選ばれていた選手であり、近年の大学生キャッチャーでは間違いなくNo.1の大物である。そんな選手が入ったことで危機感を持った部分もあったはずだ。進藤も二軍ではレギュラーとしてプレーしており、今後数年にわたってレベルの高い正捕手争いが繰り広げられることになりそうだ。
水谷は愛知県出身だが、高校は島根の石見智翠館に進学。レギュラーになったのは2年秋からということもあって、田宮と比べても全国的な知名度は高くなかった。その評判が聞こえ始めたのは3年になってからで、春の中国大会ではチームは初戦で宇部鴻城に敗れたものの水谷自身はホームランを含む3安打の活躍を見せている。
残念ながら高校時代の水谷を現場で見ることはできなかったが、当時のプレーを映像で見た印象としては、現在のチームメイトである万波中正とイメージが重なるという印象を持ったことをよく覚えている。上背はあるものの体つきはまだ細く、スイングに関しても上半身とリストに強さに頼った部分が多く、対応力には疑問が残った。実際、3年夏の島根大会も5試合で2本のホームランは放ったものの、打率は.263に終わっている。 水谷にとって後押しとなったのがソフトバンクのチーム事情ではないだろうか。当時のチームは黄金時代の真っ只中にあり、中途半端な即戦力よりも、時間はかかってもスケールの大きい未完の大器タイプを多く指名していたのだ。吉住晴斗(17年1位)、杉山一樹(18年2位)、小林珠維(19年4位)、笹川吉康(20年2位)、田上奏大(20年5位)などがまさにそんな選手である。
また、水谷にとってもう一つ幸運だったのはソフトバンクの恵まれたファーム環境で力をつけ、ある程度一軍で戦える実力がついた段階でチャンスの多い日本ハムに移籍できたことだろう。まさに現役ドラフトの狙いにマッチした選手と言えるのだ。
ただ、実際にはチャンスをモノにできる選手ばかりではなく、水谷の移籍してからのアピールも見事だったことは確かである。特に4月に一度二軍に降格してからも、イースタン・リーグでの成績を落とすことなく打ち続けた点は大きかったと言えるだろう。
プロ野球では段階を踏んで成績を伸ばすのではなく、いきなりブレイクするケースの方が多いが、二人揃ってここまで急激に成長した例はそうそう多くはない。残りのシーズンも彼らがチームの命運を握る存在であることは間違いないだろう。
文●西尾典文
【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。
【関連記事】中野、宗、長岡のゴールデン・グラブ受賞3人がいずれも新型指標UZRで大幅低迷。“守備の名手”に何が起きているのか<SLUGGER>
水谷は愛知県出身だが、高校は島根の石見智翠館に進学。レギュラーになったのは2年秋からということもあって、田宮と比べても全国的な知名度は高くなかった。その評判が聞こえ始めたのは3年になってからで、春の中国大会ではチームは初戦で宇部鴻城に敗れたものの水谷自身はホームランを含む3安打の活躍を見せている。
残念ながら高校時代の水谷を現場で見ることはできなかったが、当時のプレーを映像で見た印象としては、現在のチームメイトである万波中正とイメージが重なるという印象を持ったことをよく覚えている。上背はあるものの体つきはまだ細く、スイングに関しても上半身とリストに強さに頼った部分が多く、対応力には疑問が残った。実際、3年夏の島根大会も5試合で2本のホームランは放ったものの、打率は.263に終わっている。 水谷にとって後押しとなったのがソフトバンクのチーム事情ではないだろうか。当時のチームは黄金時代の真っ只中にあり、中途半端な即戦力よりも、時間はかかってもスケールの大きい未完の大器タイプを多く指名していたのだ。吉住晴斗(17年1位)、杉山一樹(18年2位)、小林珠維(19年4位)、笹川吉康(20年2位)、田上奏大(20年5位)などがまさにそんな選手である。
また、水谷にとってもう一つ幸運だったのはソフトバンクの恵まれたファーム環境で力をつけ、ある程度一軍で戦える実力がついた段階でチャンスの多い日本ハムに移籍できたことだろう。まさに現役ドラフトの狙いにマッチした選手と言えるのだ。
ただ、実際にはチャンスをモノにできる選手ばかりではなく、水谷の移籍してからのアピールも見事だったことは確かである。特に4月に一度二軍に降格してからも、イースタン・リーグでの成績を落とすことなく打ち続けた点は大きかったと言えるだろう。
プロ野球では段階を踏んで成績を伸ばすのではなく、いきなりブレイクするケースの方が多いが、二人揃ってここまで急激に成長した例はそうそう多くはない。残りのシーズンも彼らがチームの命運を握る存在であることは間違いないだろう。
文●西尾典文
【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。
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