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プロ野球

メディシンボール投げや垂直跳びに加えて読解力テストも――アメリカの「ドラフトコンバイン」形式で行われる西武の入団テストに感じた大きな可能性<SLUGGER>

氏原英明

2024.10.02

 ここ2年はスピードのある野手が指名に至っているという傾向はあるものの、今後はまた別のスキルを持った選手が指名される可能性は十分ある。

 その一方で、合否に関係なく、高校生がこのプロテストを受ける意義があることも見逃せない。彼らにとって、ここでしか得られない収穫があるからだ。

 今回のテストに参加した6人の高校生のうち、最大の注目選手はこの夏の甲子園にも出場した聖カタリナの有馬恵叶だ。甲子園では初戦で敗退したもののストレートの最速は146キロを計測。ドラフト候補の一人に上がっている。実は、プロテスト受験時点では西武からの調査書はまだ届いていなかった。

「甲子園が終わってから監督に受けてみたらどうかと言われました。受けたことが噂になって価値が上がったりするのかなって。受けてみて、ストレートは持ち味を出せたかなと思います。すごい環境も整っている。自分もやったことないテストがあったんで、『何でこのテストをやるんやろう』とか、『この瞬発力、ここに生きるのか』とか考えてすごいなと思いました」
 ドラフト候補と注目されながら、神奈川県大会の初戦で敗退した平塚学園のエース三村幸次郎はこう語る。

「県大会では初戦で負けてしまって、言い訳みたいになるんですけど、大会前の練習試合で爪が割れちゃって、カットボールやスライダーが全然曲がらなくなってしまった。それで試合に負けて、8月くらいに監督から受けてみたらどうかと言われて受験しました。キャッチボールの相手の方がリリースの時にパチンという音がして、そんな人を見たことがなくて、上には上がいるんだなと思いました。テストの測定も初めてやったものばかりで、プロはこんなところも見るんだというのを知りました。マウンドで投げている時に、隣のベルーナドームの応援が聞こえてきて、今ままではファンとして見てきたんですけど、本当に一軍のマウンド立って投げたいなって思いました」

 プロの施設でテストを受け、最新の機器で数値を見てもらえる。さらにすぐ隣で一軍が試合をしている様子が聞こえてくる中でのプレーというのはなかなか体験できるものではない。

 選手たちの輝いた目を見ていると、このテストが彼らにとって絶好の機会であることがよく分かる。例えドラフト指名につながらなかったとしても、自分が今後どんな能力を伸ばしていくべきかの指針を得られるに違いない。球団側にとってはもちろん、高校生にとっても貴重で有意義な体験になったはずだ。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。

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