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MLB

先発投手の登板間隔の主流は中4日から中5日へ――佐々木朗希の成功を“後押し”するかもしれないMLBのトレンドの変化<SLUGGER>

ナガオ勝司

2024.11.22

 大事なのは、それがNPB出身選手に限ったことではない、という事実だろう。

 たとえば、今年のナショナル・新人王を獲得したポール・スキーンズ(パイレーツ)は、全23先発で中4日がゼロ。中5日で19試合、中6日以上が4試合と、かなり丁重に扱われていた。スキーンズのチームメイトで、やはり今年デビューした同年齢のジャレッド・ジョーンズも、22先発のうち中4日はわずか2試合のみで、中5日が14試合、中6日以上が6試合と「ゆとり」ある起用法だった。

 今年、MLB最多の208.2イニングを投げたローガン・ギルバート(マリナーズ)にしても、全33試合中、最も多かったのは中5日での15試合で、中4日での登板はそれと同等の14試合に過ぎなかった。3年前の2021年にデビュー年は全24試合中、中4日は5試合のみである。同年、最も多かったのは中5日の15試合で、中6日以上も4試合あった。

 MLBにおける登板間隔の主流が、中4日から中5日へと移行しつつある理由は、それが多発する投手の肩・肘の怪我に対する一つの答えと考えられているからだ。

「いかにして投手を怪我からを守るのか?」というのはMLB各球団にとっての命題で、長年に渡って議論されてきた。先発投手にとっては、厳しい球数制限と登板間隔がその対処法だと考えられているのは間違いないところで、その仮説を後押ししたのが、MLBと選手組合が協力して、労使協定でチームのオフ日を増やしたことだった。

 とはいえ、信頼に値する先発投手がどのチームにも5人いるわけではなく、日本で言うところの「三本柱」に匹敵する戦力を持つチームは少ない。かつてはオフ日を利用して、そこから外れた5人目の先発をスキップし、4人でローテーションをやり繰りしていたが、そこに一石を投じたのが、救援投手を先発させるオープナーで、それが成功するチームが増えると、先発投手が「中4日」で登板する機会そのものが、極端に少なくなった。
 今季、アメリカン・リーグのワイルドカード3枚目に滑り込んだタイガースなどは、シーズン終盤は実質、2人で先発ローテを回し、あとはすべてオープナーでやり繰りして成功している。タイガースの例は極端としても、NPBよりも厳しい球数制限があるところに、中5日が主流となりつつあるのは間違いのないところで、それは佐々木にとって追い風になるだろう。

 もちろん、メジャーよりもさらにゆとりがあるNPBですら、一度も規定投球回数に達しなかったのだから、「佐々木にとっては中5日でも短い」と言われればそれまでなのだが、佐々木を獲得するMLB球団もそのあたりは慎重に考えているだろう。もしかしたら、前出のスキーンズやジョーンズ、あるいはギルバート以上に丁重に扱われるかも知れない。中5日が厳しい、ということになれば、時には中6日を挟んで佐々木を育成することになるだろう。

 そこで参考になるのは、実は「投打二刀流」で他の先発投手よりも投球間隔が長かった大谷ではないかと思う。

 大谷は2018年、日本で実証された「ほぼ週1回」=全10試合とも中6日以上の登板間隔で4勝2敗、防御率3.31という好成績を残している。投手だけなら新人王には届かなかっただろうが、打者として104試合に出場して22本塁打を放ったことが認められ、同賞を獲得した。ただし、同年の6月には右肘を痛めて9月にトミー・ジョン(靭帯再建)手術を受け、2年後の20年7月に投手として復帰したものの、後遺症も出たため、最初の3年間はわずか12試合にしか登板できなかった。
 
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