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プロ野球

外野の守備固め&敗戦処理は本当に根尾のためになるのか。登板時も最低1打席の保証を【氏原英明の直球勝負】<SLUGGER>

氏原英明

2022.06.08

 そんなマルチ起用について、かつて本人に尋ねたことがある。

 根尾はシンプルな言葉でこう語っていた。

「試合に出るための手段の一つという考え方ですね」

 試合に出るためにこなせるポジションは多くあった方がいい。そのうちの一つに投手も含まれている。根尾はそんな風に考えているのかもしれない。高校時代はライト、センター以外に、三塁とショートの出場経験がある。おそらく、レフトも二塁も一塁も必要であればできただろう。

 さまざまなオプションを持つことで試合出場が叶い、居場所を確保できる。これは根尾にとってポジティブな要素だった。事実、プロに入ってからも彼の出場機会に貢献したのは外野ができるポテンシャルである。彼が投手として起用を受け入れたのも、「試合に出る」ことにフォーカスして納得できたからではないか。
 
 一方で、そうであるからこそ投手で起用する限りは約束されるべきことがある。それは根尾に対して「1打席」を保証することだ。

 野手・根尾にとって今、必要なのは打席経験だ。外野の守備固めと敗戦処理をこなす便利屋としての出場ばかりになれば、打席の確保はままならない。

 果たして、それは根尾のためになるのだろうか。

 先述のように、根尾は「試合に出るための手段」として複数のポジションでの起用を受け入れた。ただ、それは打席も含めて試合に貢献するという意味合いだったに違いない。

 つまり、根尾をもし野手として今後も育てる気があるのであれば、敗戦処理の登板であっても、最低1打席は保証するべきではないか。打席経験を積めない若手が成長することはほぼないと言っていい。

 もっとも、根尾を投手に転向させようとしているのなら話は別だが……。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。根尾の二刀流については、YouTubeチャンネル「野球を正しく伝えるチャンネル」でも論じている。
 
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