専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
MLB

MLBの不文律をめぐる「あいまい」な領域。マイコラスの故意死球退場処分は果たして正しかったのか<SLUGGER>

ナガオ勝司

2023.07.31

「今までに何度か(フォロースルーで)バックスイングを受けたことはあるけど、今日みたいなのは初めてだと思う。本当に最悪なことだけど、脳震とうもないし、今は大丈夫だ。(ハップとは)友人だし、彼が意図的にしたわけじゃないことは分かっている。 キャッチャーに対してスウィングしようなんて人がいるわけがない」

 ただし、カーディナルスの一員としては、マイコラスが自分のためにしてくれたことに対する感謝の気持ちも明らかにしておかねばならない。

「確実に自分をサポートしてくれる人がいるのはいいことだと思う」

 マイコラスに続いて退場処分を受けてオリバー・マーモル監督はこう言っている。

「(コントレラス負傷後の)最初の1球の後が意図的だったというのが(審判団の)説明ならば、その球の後に警告すべきだ。それならば、誰もが(退場という)トラブルを避けられたはずなんだ」

 報復死球を投げたことになるマイコラスはこう言っている。

「ちょっと驚いたね。皆さんも分かってる通り、僕はただ内角を攻めただけで、その時は誰も何も言わなかったんだ。次の球が彼に当たり、彼が出塁したというだけのことだ。次の打者に投げるために待っていたら、彼ら(審判団)が協議を始めて、僕を退場することを決めた。何の警告もなかったのに」
 そういうコメントをセントルイスの記者は待っていた。だから、「code of conduct in this game=このゲームの行動規範」という言葉を用いて「チームメイトを守るため、立ち上がるのは大事なことか?」と続けて問うた。

「そうだね。どんな状況であっても、私はウィルソン(・コントレラス)を支えている。彼は私のキャッチャーであり、本当にいい友達だと思っている。我々は常にお互いを支え合っていると信じている。 そして、審判たちもそれこそは僕がやったことだと思ったはずなんだ」

 ちなみにMLBでは、記者が審判団に直接、押し寄せて質問することは出来ない。今回のような「事件」が起きた時にのみ、代表者が質問をする機会を与えられる。試合後に発表された審判団の「説明」は以下のように、単純明快だった。

「(主審の)ライアン(・アディトン)は100%故意死球だと感じました。それでも我々は集まって協議することになっており、故意であったことに疑いがないと判断しました。そしてそれが故意であったのならば、どこに当たろうとも退場処分になるのです」

「そこまでする?」と「まさかねーっ」、そして「しょうがないよね」と「分かってるでしょ?」。書かれざるルールはしかし、とてもハッキリと処分を追加する。

 翌日、負傷退場のコントレラスは「5番・指名打者」で元気に出場。マイコラスには5試合、マーモル監督には1試合の出場停止処分と、それぞれへの罰金処分が下された――。

文●ナガオ勝司

【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO
 

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号