それでも球団はFOXと20年契約を締結し、総額25億ドル~30億ドルとも言われる巨額の放映権収入を背景に、ドジャース保有に問題ないことを主張するが、マッコート夫妻が何年にも渡って巨額の脱税をしながら、ドジャースから収益を得ていたのではないか? と査察が入ったと報道されるなど、事態は混迷を極めた。
そこで11年、コミッショナーのバド・シーリグ(当時)は、先行き不明な経営状況を懸念して、ドジャースをMLB機構の監視下に置くという声明を発表。マッコート氏は反発したものの、それ以上の経営権存続は不可能と判断し、翌12年、投資グループのグッゲンハイム・ベースボール・マネジメントへの売却を発表するに至った。
それによって球団の運営権を手にしたのが、大谷の入団会見でも紹介されたマーク・ウォルター・チェアマン、スタン・カステン社長のツートップである。
彼らはドジャース買収後、編成トップに低予算ながらヤンキースやレッドソックスと互角以上の闘いをしていたレイズのアンドリュー・フリードマンGMを引き抜き、今の“王朝”を築いたわけだが、その終わりを予感させるものは今のところ一つもない。
フリードマン編成総責任者が、さらなるヘッドハンティングで流出する可能性も極めて低い。
なぜなら、前出のドジャースの経営トップは、14年当時、「編成トップとしては市場最高額」と言われた5年3500万ドルでフリードマンを雇ったわけで、19年の契約更新時にも去就がまったく話題にならなかったことを考えると、現状に不満を抱いていないことが分かる。
あるとすれば、ウォルター・チェアマンやフリードマン編成総責任者の「引退」だが、それについてもあまり心配する必要はないだろう。
なぜなら、現在の経営トップは前任者のような家族経営ではなく、投資家グループによって成立している「ビジネス集団」であり、人事異動が必然となる際には必ず、信頼に足る後任者を選出するはずだからだ。それに、フリードマン編成総責任者には「高い競争力と年俸総額の維持」を達成するミッションとは別に、人材の発掘と育成というミッションも併せて達成してきた実績がある。
実際、フリードマンの下で働いた後にGMや編成トップになった人材は多い。レイズのピーター・ベンディックス、ブルワーズのマット・アーノルド、ブレーブスのアレックス・アンソポロス、ジャイアンツのファーハン・ザイディら、そうそうたる面々だ(注:アンソポロスはブルージェイズGMを辞任後、ザイディはアスレティックスでGM補佐を経て、ドジャースに合流している)。
ドジャースの経営トップも編成トップも、たとえ何らかの事情で退陣したとしても、その時点で確かな後継者が育成されているはずで、それはフリードマン退任後のレイズが、現在もヤンキースやレッドソックスを相手に互角以上の戦いを続けていることでも充分、証明されている。
よってドジャースは今後、黒歴史を繰り返すこともないし、大谷を失う可能性も極めて低い。
ドジャースは国際的な収益と国際的なファンの幅広い支持を受けるビッグクラブであり、98~00年のヤンキースを最後にどのチームも成し遂げたことのないワールドシリーズ連覇が、大谷を擁する次の10年の目標であるべきなのだ――。
文●ナガオ勝司
【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO
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そこで11年、コミッショナーのバド・シーリグ(当時)は、先行き不明な経営状況を懸念して、ドジャースをMLB機構の監視下に置くという声明を発表。マッコート氏は反発したものの、それ以上の経営権存続は不可能と判断し、翌12年、投資グループのグッゲンハイム・ベースボール・マネジメントへの売却を発表するに至った。
それによって球団の運営権を手にしたのが、大谷の入団会見でも紹介されたマーク・ウォルター・チェアマン、スタン・カステン社長のツートップである。
彼らはドジャース買収後、編成トップに低予算ながらヤンキースやレッドソックスと互角以上の闘いをしていたレイズのアンドリュー・フリードマンGMを引き抜き、今の“王朝”を築いたわけだが、その終わりを予感させるものは今のところ一つもない。
フリードマン編成総責任者が、さらなるヘッドハンティングで流出する可能性も極めて低い。
なぜなら、前出のドジャースの経営トップは、14年当時、「編成トップとしては市場最高額」と言われた5年3500万ドルでフリードマンを雇ったわけで、19年の契約更新時にも去就がまったく話題にならなかったことを考えると、現状に不満を抱いていないことが分かる。
あるとすれば、ウォルター・チェアマンやフリードマン編成総責任者の「引退」だが、それについてもあまり心配する必要はないだろう。
なぜなら、現在の経営トップは前任者のような家族経営ではなく、投資家グループによって成立している「ビジネス集団」であり、人事異動が必然となる際には必ず、信頼に足る後任者を選出するはずだからだ。それに、フリードマン編成総責任者には「高い競争力と年俸総額の維持」を達成するミッションとは別に、人材の発掘と育成というミッションも併せて達成してきた実績がある。
実際、フリードマンの下で働いた後にGMや編成トップになった人材は多い。レイズのピーター・ベンディックス、ブルワーズのマット・アーノルド、ブレーブスのアレックス・アンソポロス、ジャイアンツのファーハン・ザイディら、そうそうたる面々だ(注:アンソポロスはブルージェイズGMを辞任後、ザイディはアスレティックスでGM補佐を経て、ドジャースに合流している)。
ドジャースの経営トップも編成トップも、たとえ何らかの事情で退陣したとしても、その時点で確かな後継者が育成されているはずで、それはフリードマン退任後のレイズが、現在もヤンキースやレッドソックスを相手に互角以上の戦いを続けていることでも充分、証明されている。
よってドジャースは今後、黒歴史を繰り返すこともないし、大谷を失う可能性も極めて低い。
ドジャースは国際的な収益と国際的なファンの幅広い支持を受けるビッグクラブであり、98~00年のヤンキースを最後にどのチームも成し遂げたことのないワールドシリーズ連覇が、大谷を擁する次の10年の目標であるべきなのだ――。
文●ナガオ勝司
【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、
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