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「通訳でありながらデータでもあり、時にはボディーガード」オールスター選出の今永昇太とスタンベリー通訳の“幸福な関係”<SLUGGER>

ナガオ勝司

2024.07.20

「第一印象は……『投げる哲学者』と聞いていたので、頭脳派の選手なんだというのは知ってたんですけど、日本のプロ野球のことをそこまで知らなかったんで、ただ凄い選手なんだろうな、と。でも、話してみたら、自分と同じようにスニーカーを集めてたりとか、それで話が盛り上がったりとか、変な言い方になっちゃいますけど、普通の人なんだなって」

 断言してもいいが、そこには今永なりの思い遣りもあったのだと思う。彼は心身ともにメジャー流にどっぷり浸かりながらも、他の多くの日本人選手同様、自分のやり方に「確固たるアイディア」を持っている。その両者の擦り合わせに通訳が重要な役割を果たすことを、本能的に理解しているようで、日本文化特有の「謙虚さ」や「遠慮」が円滑なコミュニケーションの妨げになることを敏感に察知し、ある程度は排除する必要もあったのだと思う。

 違う言い方をすると、彼らの間には「良い距離感がある」。少なくとも、傍から見ていてとても「Solid=堅固」に見える。それはたとえば、スタンベリー通訳のこんなコメントからも窺い知れる。

「プロ野球からメジャーリーグに来て、1年目にこんな成績を残すのは、本当に凄いことだと思いますし、身近にいるので、どれぐらい努力をしているのかが分かります。でも、僕が一番すごいなと思うのは、良い登板だったり、良くない登板がある中で、いろんな努力をして立ち直ってることなんです」
 そんなスタンベリー通訳のことを、今永はこう言っている。

「エドウィンは単に言語を訳すだけじゃなく、打たれた後は1週間、彼も同じような気持ちで過ごしてますし、僕が良い投球で投げ終えた時は、彼も嬉しそうな1週間を過ごしているので、通訳以上の存在だと思います」

 例のキリっとした顔つき+目が笑っている+口元も少し綻んでいる表情で、彼はこう付け加えた。

「だから、彼は僕の通訳でありながらデータでもあり、時にはボディーガードとして……一つオールスターに行って危惧することがあるとすれば、僕の顔と名前を知らない選手が間違えてエドウィンのことを『イマナガ』と思わないのかが不安ですけど」

 そんな冗談も今では過去のこと。「Mic’d up」で2人ともそれなりに目立ち、それなりに楽しんだオールスター・ゲーム。夢の晴れ舞台で三者凡退デビューを飾った役者と、キャラの濃い黒子に拍手を送りたい――。

文●ナガオ勝司

【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO

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